2023年、5月。雨が降りしきるピッチを退く背番号11の目には、光るものが浮かんでいた。ルヴァン杯決勝ぶりに見せた涙は、うれし涙ではなく、悔しさから滲んだもの。だが、全治不明のケガにより戦線離脱を余儀なくされた若きエースは、その3カ月後、2万人を超えるファン・サポーターの見守る前で、見事に復活を遂げてみせた。

 2023シーズン、プロ2年目にしてクラブにとって欠かせないピースとなった満田誠。その復帰までの道のりを改めて辿る。(インタビューは2023年9月収録・全3回前編)

2023シーズンは負傷離脱もありながら、27試合に出場し7得点を上げた。

期待とともに始まった新シーズン。チームにとっても痛手だった離脱

ー大きな期待をされてはじまった2023シーズンでしたが、満田選手は5月7日の福岡戦(○3ー1)で右膝十字靭帯部分損傷という大きなケガをされ、離脱を余儀なくされました。復帰されるまでの道のりをお伺いできますか。

「ケガをしたのはチームも調子の良い時期でしたし、リーグ戦でも上位につけているなかでもあったので、そのタイミングで戦線離脱してしまったことはすごく悔しかったです。ケガをした直後は多少、落ち込みましたが、その後は『チームメートがやってくれる』と信じて、自分はリハビリに専念していました。もちろん、チームが苦しんでいるなか、自分自身もサッカーができないというもどかしさはありました。ただ、周りから『焦らずにしっかり治してほしい』と声をかけてもらえていたので、焦らず復帰に向けて苦しい時期を乗り越えることができたのではないかと思っています」

ーこれまであれだけ大きなケガをされた経験はありましたか。

「高校3年生になる前に、一度経験したことがあります。それ以外にも短い期間の離脱はありましたが、1カ月を超える離脱はそれ以来になると思います。5月にケガをしてから最初の2カ月は、ボールを蹴ることもできませんでした。これまではそれだけ長い期間ボールに触らないことがあまりなかったので、そこが一番、自分にとってもどかしさを感じた部分でした。復帰への不安というよりも、『早くサッカーがしたい』という気持ちの方が大きかったと思います」

ー満田選手は自身のリハビリが続くなかでも、吉田練習場(安芸高田市サッカー公園)でのファンサービスに対応されていました。

「リハビリ中は、本当にたくさんの方に声を掛けていただきました。ファンの方からは『どれだけかかっても良いから、帰ってくるのを待っている』と言葉をかけてもらったことを覚えています。そんなに特別なものではないかもしれませんが、僕にとってはすごく心に残る言葉でしたし、復帰への励みにもなったのかなと思います」