新井貴浩監督1年目となった2023年シーズンのカープは、全員野球で周囲の下馬評を覆す戦いを展開し、5年ぶりAクラスとなるリーグ2位となった。

 昨季新井カープの戦いの中で、話題の1つとなったのが「4番・上本崇司」だ。上本は2022年に「10年目のブレーク」を果たすと、2023年も重宝された。守ってはバッテリーと一塁を除くすべてのポジションでスタメン出場し、打っては1番から8番でスタメン起用され、“超ユーティリティープレーヤー”としてチームを支えた。

 ここでは、長い下積み期間を経てカープに欠かせない選手となった上本の入団からの足跡を改めて振り返る。(全2回・前編)

写真はプロ1年目・2013年の上本崇司。入団時から背番号0番が与えられた。

◆2013年 守備力・機動力を評価されドラフト3位で入団

 広陵高から明治大に進み、大学では主にショート、セカンドでプレー。高い守備力と俊足を買われ、2012年ドラフトでカープから3位指名された。背番号はカープでは歴代ユーティリティープレーヤーたちが付けてきた『0』に決まった。

 即戦力としての期待が大きく、5月7日のDeNA戦に代打で登場してプロデビューを果たすが、レギュラー争いに加わることはできず、一軍では代走や守備固めを狙う立場だった。

 プロ1年目は一軍で30試合出場するも、2安打2打点、スタメンでの出場は4試合に終わる。9月18日の試合では、対戦相手の阪神に所属していた4歳上の実兄・博紀と、兄弟そろっての出場も果たした。

◆2014年 一軍スタメン出場はなし 二軍で鍛錬の日々

 プロ2年目は、ルーキーの田中広輔が開幕一軍入りを果たし、シーズンを通して一軍に帯同。田中がショートとサードで起用されたこともあり、上本は主に代走、守備固めで起用された。一軍では2安打にとどまり、スタメン出場は0に終わるなど、主に二軍で鍛錬の日々を過ごした。

◆2015年 緒方政権下で スイッチヒッターに挑戦

 2014年のシーズン終了後からは、就任したばかりの緒方孝市監督の助言もあり、スイッチヒッターへの挑戦を始めた。この年は体が動かず思うようにプレーできなかったと言い、ウエスタン・リーグでも86試合の出場で打率.238、10失策を重ね、初めて一軍に上がることができなかった。

◆2016年 チーム好調の裏で 打撃不振に苦しんだ1年

 チームが25年ぶりのリーグ優勝を果たした2016年は、代走、守備固めなどで一軍で7試合に出場し、打席に立つ機会はなかった。ウエスタン・リーグでも63試合で打率.213と、打撃面で苦しみ、歓喜に沸く一軍の影で不完全燃焼に終わった。

◆2017年 持ち前の足を活かし 走塁のスペシャリストに

 一軍が2連覇を果たした2017年は、プロ1年目を上回る37試合に出場。要所でチームの勝利を呼び込む好走塁を見せ、プロ初盗塁もマークした。秋からはより多くの出場機会を求めて外野手への挑戦を始め、さらにユーティリティー性を強めていく。

◆2018年 初のシーズン一軍帯同

 春季キャンプから6つのポジションに就き、ユーティリティーぶりをアピール。打席に立つ機会こそ少なかったが、シーズンを通して一軍に帯同し、前年を上回る59試合に出場し、6盗塁をマークした。また、野間峻祥と高橋昂也のヒーローインタビューに謎の通訳として登場するなど、ムードメーカーとしてもチームを盛り上げた。

◆2019年 右打ち専念で打撃でも活躍 代打出場で決定機を演出

 一軍で31試合に出場。代打で登場しサヨナラ勝利を呼び込む安打を放つなど、要所で活躍を見せた。シーズン途中からは、取り組んできたスイッチヒッターを止め、右打ちに専念した。

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