連日激しいポジション争いが繰り広げられているカープ沖縄キャンプ。そんな中、新井貴浩監督は今季の開幕投手を九里亜蓮に託した。

キャンプで力投する九里亜蓮投手

 開幕投手争いは、昨年まで5年連続開幕投手の大瀬良大地をはじめ、昨季チーム最多11勝の床田寛樹、森下暢仁らも候補として見られていたが、プロ11年目で九里が大役を担うことになった。九里は昨季、イニング数12球団トップを記録するなど、年間通じて先発ローテーションを守り抜いた。クライマックス・シリーズでは中継ぎ登板もこなすなどフル回転の活躍でカープ投手陣を支えた。

 ここでは改めて九里の原点を振り返るべく、2013年ドラフト指名直後の独占インタビュー(広島アスリートマガジン2013年12月号掲載)をお送りする。

◆父親の影響で野球をスタートした

― まずは野球を始めたきっかけを教えていただけますか?

「父親の存在だと思います。父親が野球をやっていたので、その影響ですね。プレーしている昔の写真やビデオを小さい頃から見ていたので、それがきっかけでしたね」

― 野球を始めたときからピッチャーだったのでしょうか?

「いや、中学に入ってからです。小学校までは父親にピッチャーをやらせてもらえなかったんです。だから内野手をやっていました」

― 投手をやらせてもらえなかった理由は何だったのでしょうか?

「自分は小学校のときまでアメリカにいたんですけど、アメリカは全部硬球なんです。だから、小さいときから硬式でやっていると故障につながるということでやらせてもらえなかったんです。それで、ずっとショートをやっていました。でも、やっぱり投手をやりたかったですし、たまに抑えで1イニングやらせてもらえたときは、本当に楽しくて、うれしかったですね」

― プロ入りを意識したのは、いつからですか?

「それが、記憶はないんですけど、すごく小さなときから『(プロに)行くわー!』って言っていたみたいです(笑)。父親がマイナー選手だったので叶えられなかった夢を、自分が叶えたいなという思いはずっとありました。ただ、将来アメリカに行きたいとかそういうのは考えていないんですけど(本誌2013年11月号の前田智徳氏を指さしながら)こういう選手になりたいです。ひとつの球団に一筋で、『カープ=九里亜蓮』っていう風になれたらカッコイイじゃないですか。そういう選手になりたいです」

―ドラフト当日を迎えるまで、どのような気持ちで過ごしていたのでしょうか?

「自分はドラフトにかかるか、かからないか分からなかったので、親とも話をして指名されたときは指名されたとき、ダメだったときはダメだったときと割り切っていかないといけないと思っていました。最初から割り切っていたので、緊張とかがなかったんです。前日も爆睡してました(笑)」

― 実際にご自身の名前が呼ばれたときはどうでしたか?

「隣に嶺井(博希・DeNAドラフト3位)が座っていたので、先に自分の名前が呼ばれたときは、うれしかった部分もあったのですが、嶺井の名前が呼ばれていなかったので、まだ選ばれていないヤツの隣で喜ぶ気持ちにもなれませんでした。本当に喜べたのは、嶺井の名前が呼ばれた瞬間ですね」

◆特長はバッターに向かっていく姿勢

― 九里選手が考えるご自身の個性、色とはどんなものでしょうか?

「自分の特長は投げるときにバッターに向かっていく姿だと思っています。気持ちから負けたくないという思いでマウンドに立っているので、バッターに向かっていく姿勢とか闘志を表に出していく気迫のあるピッチングや、威圧感ですかね。カープの選手ではないんですけど、楽天の田中将大投手は気迫が表に出ているのがすぐにわかるじゃないですか。そういう気持ちから負けないような選手になりたいなと思います」

― では、田中投手を目標にしている部分もあるのでしょうか?

「いや、目標にしているのは前田健太投手です。自分は『勝てるピッチャー』というのを目指しているので、前田健太投手だったり野村祐輔投手の動画を見たりしていました。だから、良いチームに入れてうれしいし、2人を間近に見られるので本当に楽しみです。教えてもらうのではなく盗んでいきたいなと思っています」

― ドラフト1位の大瀬良投手とも大学日本代表で一緒だったと聞きました。

「はい、大瀬良とは大学の日本代表で一緒だったので、そこから気が合って、ずっと連絡を取っています。自分的には仲良くしていると思っているんですけど……アイツはどうなのかな(笑)。同世代の選手も多いですし、一緒に切磋琢磨していけたらいいなと思います」