プロ野球開幕から1ヶ月が経過した中で、セ・リーグ1位の打率をマークするなど好調をキープするカープ打線。投手陣の不安定さが目立つ一方で、コンスタントに結果を残す4番・鈴木誠也、そして堂林翔太の覚醒など、生きの良い打者たちの活躍が目立っている。
 そんなカープ打撃陣を司る朝山東洋一軍打撃コーチが開幕前の時点で語っていた“2020年型打線の構想”を紹介する。
(『広島アスリートマガジン』2020年4月号より)

昨季までは若手育成がメインの二軍打撃コーチを担当。今季からは一軍打撃コーチを務める朝山東洋一軍打撃コーチ。

◆各打者に求めるのは打席内での“メリハリ”  

 理想は『大味な野球でどんどん点が取れること』です。でも実際そんな野球をやらせてもらえることなんて、ほとんどありません。接戦をいかにモノにできるかということが、シーズンを戦う上で重要となってきます。ずっと口を酸っぱくして言っているのは、つなぐ意識と1打席をあっさりと終わらせないということ。一球でも多く相手投手に投げさせるという意識がボディーブローのように効いてきます。

 練習でもファールで逃げる打撃を取り入れたりしていますし9人の打者が3球ずつ余計に投げさせることができれば、投手は30球近く多く投げなければいけません。先発投手であれば約1イニング早く下ろすことができます。小さな部分かもしれませんが、一人で良かった中継ぎを2枚、3枚と投入しなければなりませんし、そういう野球をやっていきたいと思っています。

 実際オープン戦を通して徐々に意識は浸透してきていると思いますし、僕自身フロントの方と話をする中で『2ストライク後に5球相手投手に投げさせることができた。でも結果は凡打だった』というときに、それはマイナスではなくプラスの査定をつけてほしいとお願いをさせてもらいました。そうすることで『これは打てんわ』と思った投手でも気持ちを切り替え『粘ることに徹しよう』と思えますからね。

 個人的な打者の好みを言うならば、とにかく攻撃的なスタイルが好きなんです。若いカウントであればパ・リーグの打者のようにフルスイングしてほしいですし、そこで仕留めきれなかった、空振りをしてしまったりして追い込まれたとしたら、そこで初めて粘りの打撃をしてほしいのです。打席の中ではカウントでメリハリをつけてほしいと思っていますし、若いカウントから小さな打撃はしてほしくないんです。若いカウントは練習でやってきたことをお披露目できる場面です。そこは選手に“ガツン”と振ってもらって良いんです。相手投手からしたらすごく嫌だと思うんですよね。『カープの打者に対しては甘い球がいったらやられる』という印象を植え付けることができれば、それだけで儲けものです。

 これまで二軍のコーチとして一軍のナイターなどを見ていたときは、調子を落としている打者の場合、ここを直したら良くなるということを考えていました。ある程度その打者を復活させるためのプランを頭に描いた上で、実際に二軍に落ちてきたとしたらとにかく10日間で一軍に戻すということを考えて指導に取り組むことができました。今季は少し違って、状態が悪い選手をいかに二軍に落とさないかを考えるシーズンになると思います。二軍降格して再登録まで10日間かかるところを『なんとか3日待ってください』と言って、復活させる。調子を崩したときにいかに二軍に落とさずに復調させるかも自分の大事な仕事だと思っています。