勝点差3のなかに複数クラブがひしめき合い、1試合の勝敗で大きく順位が変動する混戦のJ1リーグ。ここではサンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏が、注目選手をピックアップして解説する。今回は、開幕戦で華々しいリーグデビューを果たした大卒ルーキー・中村草太について触れていく。

開幕戦で鮮烈なリーグ戦デビューを果たした中村草太

スーパールーキー登場!スピードを武器に得点を量産

 2025年シーズン、センセーショナルなデビューを飾ったルーキーが現れました。今回は、明治大から加入したFW・中村草太についてお話ししていきます。

 中村は昨シーズンのキャンプから練習参加していた期待の新星でしたが、当時から広島のサッカーにうまくフィットしていました。そこからトップチームに加入し、自分の持ち味であるスピードをより活かすための工夫をしながら、日々進化を続けている印象があります。3月2日の横浜FC戦 (◯1ー0)ではリーグ戦初スタメンながら、トルガイ・アルスランのパスに反応して裏へ抜け出し素晴らしいゴールを決めました。「まるで漫画の世界のようだ」とファン・サポーターの間でも話題になっていましたね。

 中村のスピードは武器ですし、こればかりは真似をしようとしてもできるものではありません。持って生まれたものも大いにあると言えるでしょう。スピードを活かしてゴールに関わるところに顔を出せる。相手の背後を突く動きができる。そうした部分は非常に素晴らしいものがあると思います。周りもそうした中村の特徴を理解していますから、ぴったりのタイミングとスピードでパスを出すことができます。そして、横浜FC戦で見せたトルガイのパスも巧みでした。相手DFの方がボールに近いはずなのに、気がつけば中村のところにボールが届いているという絶妙なパス。「中村なら追いつけるだろう」という意図を感じさせる素晴らしい連携でした。それだけに、トルガイがケガで離脱したことは悔やまれます。

 武器であるスピードを活かすためにも、動き出しのタイミングやパスの出し手との距離感、オフサイドラインの駆け引きが試合を重ねるごとにうまくなっていけば、より一層相手にとって脅威の存在になっていくはずです。すでに公式戦で5得点をあげています (3月13日時点。ACL2セーラーズ戦を除く)が、ここからさらに得点に絡んでいくはずです。プロ1年目とは思えない活躍で完璧にサポーターのハートをつかんだ期待のルーキーですが、ここからは研究されてマークされることで苦しむ期間もあるかもしれません。しかし、そこを乗り越えるとさらに伸びていくはずです。今シーズンのキーマンの1人として、注目していきたいと思います。