◆外角低めは内角球があってこそ生きるもの

 いくら新球を覚えようとしても、自信がなければ試合では使えない。相手に自分の球種のデータがなければ抑えられるかもしれないが、データをインプットされてからは技術の凌ぎ合い。だからこそ日頃の練習の中で、遊び感覚で試しながら自分のものにしていく努力が必要だ。

 投手は調子が悪くなると、大きく球を曲げようとする心理が働く。大きく曲がればバットから外れるという感覚になるからだ。しかし打者はスイングが始まったときに球が動いたら反応できないものの、トップの位置にバットがあるときは反応できる。

 そのため大きく曲げようとして、変化が早くなるのは逆効果。大事なのはストレートと同じ軌道から変化させることである。

 球速差だけではなく、左右高低をうまく利用することも大事になってくる。困ったときには外角低めと言われる。打者からもっとも遠いストライクゾーンであり、しっかり腰を入れたスイングでなければ球は飛ばないからだ。

 ただ、内角球を見せずに外一辺倒では当然、打者に踏み込まれてしまう。外角低めは内角球があってこそ生きるものだ。カーブでは内角に要求する回数が少ないため、相手に読まれているように感じる。

 内角に投げ切れない投手の力量もあるかもしれないが、捕手がもっと要求しなければ内角球を見せても打者は「続けては内角に来ない」と踏み込んでくる。ときには徹底的に内角を突くなどして、打者の頭の中に内角をインプットすることで、外角低めの球はより生きてくるのだ。

■北別府学(きたべっぷ・まなぶ)
1957年7月12日生-2023年6月16日没、鹿児島県出身
1975年ドラフト1位でカープに入団。1年目から白星を挙げると、プロ3年目には初の二桁勝利を達成。その後も長きにわたり先発ローテーションの柱としてカープを支えた。最大の武器は“精密機械”と称された、その緻密なコントロール。
1982年、1986年に沢村賞を受賞。1992年には球団史上初の200勝を達成した。
【通算成績】515試合 213勝 141敗 5S 3113回 防御率3.67