リーグ戦、ルヴァン杯、天皇杯に加え、AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)への出場も決まっているサンフレッチェ広島。今シーズンも過酷な過密日程が待ち構えているが、それだけに、ポジションに関わらず結果を残すことのできるポリバレントな選手の活躍が目立っている。東俊希も、複数ポジションを高いレベルでこなせる選手のひとりだ。5月以降、ボランチとしてチームを支えてきた東が、シーズンここまでを振り返る。(全3回/第2回)
◆サイドでのプレー経験が、ボランチをするうえで活きた
「川辺選手が一人で三人分くらいの動きをしてくれるので」と笑いながら、「すごく頼りになるボランチです。逆に、川辺選手は僕に対して『まだまだ』と思っているかもしれませんけど」と話す。
もともとボランチは未経験のポジションだった。2022シーズン4月の福岡戦で人生初のボランチを務めた東は、当時をこう振り返る。
「ボランチに起用されたのが本当に急だったので、正直なところ、あの時は感覚でプレーしていたところもありました。ミスも結構ありました。でも今シーズンは頭で考えながら、ポジショニングも意識しながら、良いプレーができているんじゃないかなと思っています。WBとしてプレーするなかで『今、ここで横のサポートが欲しいな』と思うこともあったので、それを自分に置き換えて、ボランチとしてプレーするときにはその時の気持ちを意識していました」
複数のポジションでプレーするからこその感覚が、今の東には宿っている。
「ボランチは常に頭を動かしていなければならないし、動きをさぼってしまうとスペースを空けてしまうポジションでもあります。だから気が抜けないし、動き続けなければいけない。そういう意味では僕の長所に合っているのかなと思っていますが、ここからはさらに1対1の強度を高めていかなければいけないと思っています」
今シーズンは、札幌から菅大輝の加入もあった。東にとっては同じ左サイドのポジションを争うライバルでもある。ただ、菅との関係性を尋ねると、「ライバルというよりも、1選手として、僕にないものを持っている素晴らしい選手だと思っています。ミドルシュートだったりキックのパンチ力だったり、パワーもありますよね。1対1の強度も高い。自分も頑張らないと、と思います」と語る。チームメートの存在が、東にとって大きな刺激になっている。
今シーズンは、ゲームの舵を取る重要なポジションを担いながら、得点でもチームに貢献してきた。3月16日の柏戦で決めた強烈なダイレクトボレーは、月間ベストゴールにも選ばれた。
「リーグ戦では柏戦と鹿島戦(6月14日・メルカリスタジアム)でゴールをあげました(取材時点)。ゴールへの感覚はこれまでと変化していないと思っていますが、どちらのゴールも練習で積み重ねてきたものが出たゴールなので、改めて練習の大切さを感じました。試合中に同じような場面になっても落ち着いてシュートを打つことができるので、それが得点の要因になったと思っています」
(第3回へ続く)