1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。
第1回目の特集は「黒田博樹インタビューセレクション」。今回は独占インタビュー2回目をお送りします。
広島とニューヨーク、ふたつの街に愛された男、黒田博樹。揺るぎない信念と覚悟を胸に、日米で活躍したその足跡は、今なお多くのアスリート、ファンの心に残り続けている。過去に広島アスリートマガジンに掲載された独占インタビューを再構成し、黒田博樹さんの言葉に込められた思い、生き様を改めて紐解いていく。
プロ2年目の1998年、先発の一角と期待されながら、ひじの故障などもありわずか1勝に終わった黒田。前年、長年カープを支えた大野豊が引退するなど、投手陣の世代交代が進んでいた1999年当時、インタビューでは先発ローテーション入りに向けて意気込んでいた。
◆まず先発ローテーションに入ることが目標
— 精神的な部分で、例えばイメージとして、黒田投手は『物事をあまり深く考えない』という印象があるんですが。もちろん、良い意味ですよ。
「そんなこともないんですけど。ただ、あんまり深く考えても、良い方向にはいかないな、という時もあるんで。だから、今はある程度考えて、シーズン入ったらあまり深く考えないように、って思ってます」
— メンタル面での自分の欠点は、どんなところだと思います? 例えばマウンドで。1年目、2年目、プレーしてみて。
「集中力ですね。1試合投げている間で所々集中力が欠けている所があると思うんです。まあ、1試合ずっと集中力を持って、っていうのは難しいですけど、その集中力が欠ける部分を、できるだけ少なくしていきたいな、と思います」
— 黒田投手も含めて、やっぱり澤崎(俊和・元カープ)投手、横山(竜士・現カープ二軍投手コーチ)投手の3人が今年やってくれないと……という期待はファン全員が持っている部分です。それに対する自信というか、手応えは今の時点でどうなんでしょう。
「今は、全くといっていいほど、自信という自信はないです。むしろ、去年ああゆうことがあったんで、不安の方が大きいです。でもそれを消していくには、練習しかないですから。自信とか不安とかそういうのじゃなくて、今はただ毎日毎日を一生懸命してる、という感じです」
— その中で、今年の目標っていう話になってくるんですけど。自分の中に、数字的な基準は持っていますか?
「と言うよりも、『一年間フル』が大きな目標ですね。ここ2年間それができなかったんで。1年通して一軍でやる、ってことはまず、自分が目標としているローテーションに入ることですよね。そしてそこに1年いれる、ってことは、それなりの結果もついてくることだと思うので。だから、何よりもまずはローテーションに入らないと、と思います」
— 黒田投手にとって、ピッチングに対してのこだわりみたいなものはありますか。例えば球の速さだとか。
「いや、持ってないですね。確かに、ブルペンに入って、横で他のピッチャーが投げてたりすると、気になってしまう部分もありますけど。でも実戦で投げている分には、そんなにこだわりはないです」
— 自分の中の、投手の理想像みたいなものはいかがでしょうか。
「いえ、理想というものはないですね。持たないといけないな、とは思うんですけど、今のところなかなか浮かんでこないです。今の時点で言えば、やっぱり点をとられないピッチャーですかね。それしか考えていないです」
— 例えば、オリジナルなメンタルトレーニングの点などは、何か心がけていますか? マウンド上では精神的な強さを感じさせる場面も多いです。
「特別なことはしていないです。マウンドに上がって、相手に弱い所を見せるとそれにつけこまれるってところがあるので、嘘でもマウンドに上がったら闘争心というか、負けたくないっていう気持ちを全面に出していこう、とは考えてます。実際には、精神的にもそんなに強くない、と思いますよ。悩んでばっかりなので…」
— 実は今日、読者の方からの質問を持ってきたんです。ちょっと答えてあげて下さい。まず一つ、「ファンの存在というのは、自分の支えになっていますか」とそして「自分を応援してくれる人の中に、家族とか友人とかがいると思いますが、やっぱり何か違いますか」ということなんですけど。
「そうですね、ファンの方の応援はやっぱり支えになりますね。ただ家族っていうのは、どうしても、違う存在でしょう。やはりまずは一番です。結婚はしてないんですけど、両親もいて、兄弟もいるので。家族が、自分が小さいころから野球をやって来た中でずっと支えてくれて、お金も出してくれて、学校にもやってくれたので、そういう面では一番恩返ししないといけないなとは思っています。その次にやっぱり自分を応援してくれる人の存在は貴重です。ヤジとか飛んでくることもありますけどね。でも、応援してくれるだけで励みになってるんで。一番は家族ですけど、次ぐらいに、応援してもらったらやる気にもなるのでファンの存在はありますよ」
— 「プロ野球ニュースなどで、やっぱり黒田さんのキャラクターが、嘘のつけない真っすぐな選手だと言われてるんですけど、それは自分でもその通りだと思いますか」ということですが。
「いや、その通りじゃないと思います。普段は違うと思います。ユニフォームを着て、マウンド立った時に、そうとられてるのかな、と思うことはありますけど。本当に普段はそんな、さっぱりはしてないです(笑)。結構考え込む方なんで。こういうキャンプ中でも、一人になる時ってあるじゃないですか。部屋でも一人なので。その一人の時間に考え込んでしまうんです」
(第3回へ続く)