1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。
第1回目の特集は、黒田博樹のインタビューセレクション。
広島とニューヨーク、ふたつの街に愛された男、黒田博樹。揺るぎない信念と覚悟を胸に、日米で活躍したその足跡は、今なお多くのアスリート、ファンの心に残り続けている。過去、広島アスリートマガジンに掲載された独占インタビューを再構成し、黒田博樹さんの言葉に込められた思い、生き様を改めて紐解いていく。
カープのエースとして存在感が増し、選手会長に任命されるなどチームの顔となった2005年。当時、開幕前のインタビューでは、ファンサービスの改革について、そして自身の成績だけでなく、チームの勝利について、その思いを口にしていた。
◆開幕戦のマウンドに上がらせてもらえるのは、チームから信頼されている証
昨年4月には3勝したのですが、5月以降勝ち星が伸びずシーズンは7勝止まりでした。開幕戦のナゴヤドームで序盤にもらった5点差を逆転されて敗戦投手になったことはとてもショックで、気持ちの切り替えがなかなかうまくいかなかったように思います。翌週から2試合連続で完投勝利を挙げたのですが、気持ちの中でシコリが残りましたね。
やはり開幕戦のマウンドに上がらせてもらえるのは、それだけチームから信頼されている投手ということだと思いますし、期待されているのもわかっていました。『140試合分の1』ということではなくて、早い時期から開幕投手に指名されての登板でしたしね。しかも前の年にいい形で完投勝ちしていたので、5点差をひっくり返されたのはショックでした。一気に取られたのではなく、ジワリジワリと詰め寄られてでしたから、余計に悔しさはありました。抑える時にしっかり0点に抑えて、それを積み重ねていかないとああいった結果になってしまうのかな、と思っています。
6月下旬には右肩痛もあって、後半戦の7月下旬に戦列に復帰してから2試合先発した後、アテネ五輪に臨みました。シーズン中に全く別物の真剣勝負に臨むというのは初めてのことでしたから、精神的にも体力的にも正直疲れたというのが一番ですね。
出発前には「燃え尽き症候群にならなければいいけど」と言ったことがあると思います。しかし内心では、『日の丸を背負っていくのだから、燃え尽きるぐらい全力を振り絞ってもいいんじゃないか』とまで考えていました。金メダルじゃないと周囲が認めてくれないという状況もありましたし、そういう意味では精神的にもきつかったですね。