1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。 

 第1回目の特集は、黒田博樹のインタビューセレクション。

 広島とニューヨーク、ふたつの街に愛された男、黒田博樹。揺るぎない信念と覚悟を胸に、日米で活躍したその足跡は、今なお多くのアスリート、ファンの心に残り続けている。過去、広島アスリートマガジンに掲載された独占インタビューを再構成し、黒田博樹さんの言葉に込められた思い、生き様を改めて紐解いていく。

 2003年から2年連続開幕投手を務めるなど、エースへの道を歩み続けた2004年。“新しい自分を作るため〟にアリゾナで初の自主トレを実施。さらなる進化を求めていた黒田が、アスリートマガジン2004年4月号で語った言葉をお届けする。

2年連続開幕投手を務めたものの、自身は7勝9敗に終わり、チームも5位と低迷した

今まで以上の力を出したい

— 自主トレで1月にアリゾナに行かれました。これは野村謙二郎さんから誘いがあったという話ですが。

黒田 僕も前々からアメリカには行きたいとは思っていたんですが、野村さんに声をかけてもらったから弾みがついたというか、自分も行ってみようかなという気になりました。「今までにはない新しい自分をつくりたい」「今まで以上の自分の力を出したい」ちょうどそう思っていたところでした。

— アリゾナでは、現役メジャーリーガーからチェンジアップを教えてもらいました。

黒田 去年までとはもう1ランクアップというか、ひと回り大きくなりたいなと思っていたところに、たまたまチェンジアップが見つかったというだけなんです。少しでも球種が増えると投球の幅も広がりますし、相手も考えてくると思いますから。

— チェンジアップをキャンプで試してみて、手応えはいかがですか?

黒田 こればっかりは打者と対戦していってからじゃないと分からないですから、実戦で使っていって試したいと思います。チェンジアップ、チェンジアップと言いますが、1試合に20球も30球も投げる球ではないんで、そういう意味では従来の真っ直ぐとフォーク主体のスタイルプラスチェンジアップという形で使っていきたいと思います。

— 昨シーズンが終わってからアリゾナに行かれるまでのトレーニングはどんなものでしたか?

黒田 アリゾナに行く前はほとんど実家(大阪市)の近くのジムでウエイトとプールでしたね。本格的なトレーニングというほどではありませんでした。去年はアテネ五輪最終予選もありましたし、終わった後は精神的にも肉体的にもぐったりしましたので、「オフはしっかり休んでおこう」という気持ちが強かったです。良いリフレッシュができたと思います。

— 特に今年は佐々岡(真司)投手がリリーフに回られて、「自分が引っ張っていかなければ」と言う部分は出てきましたか?

黒田 自分がまず結果を残さないことには周りがついてこないというか認めてもらえませんから。「引っ張っていく」というよりはまず自分のやるべきことをしっかりやって結果を残して、それで周りがついてくるという形が良いと思います。言葉より態度で引っぱっていきたいです。

— 周囲では「開幕投手間違いなし」と言われていますが。

黒田 まあ、誰かが投げるわけですから、それが誰になるかは分かりませんが。ただ(自分が開幕投手を務めるとした場合)、自分の中で一番最初に投げるゲームというくらいの気持ちでいこうかなとは思いますけど。しかしどの試合に投げるのも大事ですが、チームの開幕に投げるということですごい責任も感じますし、またその、オープニングゲームで投げさせてもらえるうれしさもありますし。もし開幕に投げるとすれば、チームのために投げたいと思います。

— もう一つ気になるのが、アテネ五輪です。

黒田 実際、まだまだ選出されるかどうかは分からないですし。まずはシーズン中はチームのために一生懸命投げて、その結果でどうなるかだと思います。だからアテネ五輪を目指して投げるということは、僕自身の中ではないと思います。最大の目標はチームの優勝なので、アテネっていうのは今は重点を置いてはいないですね。

— 予選の時の話に戻りますが、実は黒田さんが台湾戦か韓国戦で先発すると思っていたのですが。両試合ともリリーフで、かなり厳しい場面での登板でしたね、

黒田 韓国戦は2点リードした6回1アウト1,2塁での登板でしたが、逆にああいう場面で使ってもらって、開き直って投げることができました。(上原、松坂、和田といった)投手陣の中で先発するのは難しいと思いますが。先発できなかった悔しさは忘れないようにしたいと思います。

— 今年は佐々岡さんが後ろに回ったことで、後ろがしっかりしているから行ける所まで飛ばしていくのか。やっぱり投げる以上は最後まで投げるんだという気持ちなのか、どちらでしょうか?

黒田 やっぱり精神的にも後ろがしっかりしていると、いける所までいこうという気持ちもありますし、安心感もありますから。ホントに後ろがしっかりしてくれば先発陣は気分的に非常に楽だと思います。ただ中継ぎばかりに頼っているとリリーフ陣に負担もかかってくるので、やっぱり任された試合はできるだけ責任をもって、少しでも長いイニングを投げたいという気持ちが強いです。

— 若い人たちにキャンプで色々アドバイスをしましたか?

黒田 まあ僕がまだそこまでアドバイスできる立場ではないし、まだまだ自分でやらないといけないことがありますから、まだまだ人に教えたりすることはないですね。ただ、聞きに来てくれた時にはしっかり答えてというか、若い選手のために何か良いアドバイスができれば良いと思います。