『勝負の育成3年目』。今年、辻大雅は「3年で一区切り」と言われる育成契約選手として、勝負の年を迎えていた。野村祐輔三軍コーチ兼アナリストのもとで飛躍のきっかけをつかむと、7月末に支配下登録をつかみ、プロ初登板も果たした。シーズン序盤は「支配下ということすら考えられない」と感じていた辻を支えたのは、『3年目のジンクス』だった。(取材は8月末)(全2回/第2回)
◆ 「3年目だから、何かが起きる」
─三軍トレーニングから3カ月で支配下登録を勝ち取りました。聞いたときはどのような思いでしたか。
「7月のタイミングで支配下の枠は二つ空いていて、一枠は外国人選手を補強するかもしれないという話を聞いていました。(前川)誠太さんが支配下登録されたので、今年はもうないかな、と。もう1年見て判断されるのかな、それだけは避けたいなという気持ちでした」
─今年は難しいかもしれないという気持ちもあったのですね。
「はい。ただ、諦められない気持ちもありました。それだけに、支配下にするぞと言ってもらえた時はやっぱりうれしかったです。親には一番最初に伝えたのですが、その時に母から『(今年、支配下に)なれると思っていたよ』と言われたんです。自分も最後まで支配下を諦められなかったのには理由があって、これまで全部3年目に成功してきたという経験があったんです。中学の時も3年目にやっとエースになれましたし、高校の時もずっとケガに苦しんで、3年目にエースになれました。自分のなかでも『3年目に何かが起きる』という実感がありましたし、家族からも『3年目だから大丈夫』とずっと言われていました」
─プロの世界でも、3年目に『何かが起きた』わけですね。まさに変化の1年だったのではないでしょうか。
「そうですね。三軍で野村コーチの指導を受けたこともそうですし、それ以外にもずっと悩んで、悩んで……という時期が続いたので、周りの選手との関わり方も変えてみたり、意識の面でもいろいろ変化させました。もう3年目だし、やるしかない。最後にいろいろなことに挑戦しよう、という気持ちでした」