『変化』を掲げて挑んだ2025年シーズン、結果はリーグ5位に終わり、2年連続Bクラスに沈んだ新井カープだったが、一方で終盤には多くの若手選手が一軍の舞台を踏んだ。

 2022年育成ドラフト2位で入団し、1年目で支配下登録をつかんだ中村貴浩は、今季、プロ入り後初の一軍出場なしに終わった。来季4年目を迎える期待の左打者が、育成指名への思いを語った。

2023年は一軍で15試合、2024年は11試合に出場したが、今季の一軍出場は0に終わった

◆三桁の背番号には、悔しい気持ちの方が大きかった

 育成2位での指名された当時について、中村貴はこう振り返る。

「プロに指名されてうれしい気持ちもありました。あったんですが……(背番号が)三桁で、悔しい気持ちの方が大きかったですね」

 その悔しさを原動力に、1年目の5月、支配下登録をつかみ取った。

「絶対にもう、1年目しかないと。1年目で絶対支配下になってやると決めていました。2年目になればまた新しい育成選手が入ってきます。そうすると、競争はもっと厳しくなります。なるなら1年目だと、そう思っていました」

 自身に課した『1年目で支配下登録』の誓いを見事に果たした。その背景には、練習であっても誰にも負けないという、中村貴の強い気持ちがあった。

「(練習の)量もありますし、中身の部分や、練習の見栄えも大事にしました。打席に入った時には絶対に遠くに飛ばすこと。しっかりスイングすることも意識してきました」

 それだけの思いを抱いて過ごした育成での時間だったが、支配下登録を知らされた瞬間は高揚していたわけではなく、中村貴は冷静だったという。

「目標は一軍で活躍することです。自分のやるべきことをやって、一軍に上がって、そこで結果を残す。この世界にいる限り、活躍すれば評価もされます。今は一軍で活躍することを目標にしています」

 入団時もうひとりの『貴浩』として注目を集めた若き左打者は、一軍を目指して必死にバットを振り続けている。

■中村貴浩(なかむら・たかひろ)
2000年4月9日生、福岡県出身
177cm 87kg/右投左打/外野手/プロ3年目・25歳
九州国際大付高−広島(2022年育成ドラフト2位)