今季から背番号5を背負い、主軸として期待を受けてスタートした小園海斗。厳しい戦いの中、首位打者、最高出塁率を獲得するなど孤軍奮闘を見せた。名実ともにカープの主軸への成長を遂げ、世代トップを走り続ける男に、2025年シーズンの戦いと進化の裏側にあった思いを聞いた。(全2回/第1回)

首位打者(打率.309)、最高出塁率(.365)の2冠に輝いた小園

◆相手投手と勝負するため、集中して打席に入るだけ

─シーズンが終了して少し時間が経過しました。現在の心境はいかがですか?

 「特に何も変わらずですけど、少しだけゆっくりさせていただきました」

─今季は小園選手にとってタイトル獲得など素晴らしいシーズンでした。振り返ると、開幕直後から良い入りでした。

 「キャンプから振り込んでいたこともありましたし、打撃の感覚が良くて、すごく良い入りができたと思います」

─しかし、4月下旬から調子を落とし、5月4日にはスタメン落ちもありました。シーズン前に『強いて言うなら、全試合出場が目標』と話されていただけに、悔しい思いも強かったのではないでしょうか。

 「5月は全くダメでしたね……。あの時期は少し疲れが出てしまいましたし、感覚的にも良くないところがありました。スタメン落ちしたときはすごく悔しかったですし、自分の中で弱さが出ていました。今でもまだまだと思っていますが、あの時期は体力も技術的にも落ちていました。やっぱり、チームとしては勝つことが一番ですから、あのときは『次にチャンスをもらえたときに、この悔しさを活かしていこう』と思っていました」

─5月下旬からは徐々に打撃の調子も上げていきました。何か変化はあったのでしょうか。

 「何かを変えたということはそこまでなかったですね。体の状態が良くなっていくなかで、また打てるという感覚が出てきたので、そこからコンスタントに打てたのは良かった部分だと思います」

─打撃について伺います。シーズンを通じてどんなことを意識していましたか?

 「たくさんポイントはありますが、根本的に言えば、強くスイングした上で確実性を上げていくことですね。相手投手に合わせるのではなく、そこは意識していました。当然、全部が全部気持ち良く打てないですし、そういうことを考えながら、いろいろ試しながらやっていました。日によって体の状態も違いますし、全て同じ状態にできません。僕はそんなに器用ではないですし、タイミングも投手によって変わってくるので、打席ごとにそこに合わせていくというか、いろいろ考えながらやってきた感じですね」

─シーズンを通して、主に3番を託されました。打順についての意識を聞かせてください。

 「特に意識していないと言ったら変ですけど、『3番だからこうしなきゃいけない』という考えはあまり持っていません。もちろん、打席を迎えた状況によって考えはその都度あります。昨年までもいろいろな打順を打たせてもらいましたが、基本的には任された打順でしっかり準備をすること、これを大事にしています。ただ、ずっと同じ3番という打順で使ってもらったことはありがたいことですし、毎日同じ打順で迎えることでやり易い部分も感じていました。ですが、最終的には首脳陣の方々が僕の起用を決めるので、僕は言われたポジションでしっかりと結果を残すだけだと思っています」

─例年同様、今季もチャンスには非常に強い打撃を展開しました。

 「チームにホームランをたくさん打てる選手が少ないのは事実ですし、僕自身もホームランを打てる打者ではありません。もちろん、すべての打席で集中していますが、特にチャンスの場面で打席を迎えたとき、そういう場面で集中してやっていくしかないと思っています。いろいろな状況を見ながら打席に向かっていますが、しっかり相手投手と勝負するために集中して打席に入るだけだと思っています」

─得点圏打率・413はリーグトップでした。

 「単純にリーグで一番の数字という部分は良かったと思います。個人的には得点圏打率が4割を切らないようにしたいとずっと思っていました。なかなかチャンスで打てるものではないですが、昨年よりも良い数字が残ったという点でも良かったと思います。もちろん自信にはなりますが、今年打てたからといって来年打てるか分からないので『今年は良かった。また来年もやるぞ!』という気持ちです」

─チャンスに強いことで、相手の攻めが厳しいと感じることはありましたか?

 「相手バッテリーから特に厳しい攻めをされたという感覚はありません。攻められて後追いすることは良くないですし、それは僕としては好きではないので、自分の中でいろいろ考えた上で相手バッテリーと対戦していた感覚です」

─守備面について伺います。今季はサードメインでスタートし、夏頃からショートメインとなりました。

 「守備については、もう全く……ですね。全然良くないですし、本当に投手に迷惑をかけたなと思っています。あまり動きも良くなかったので、もう少し考えないといけないと思っています。いろんなポジションを守ることもありますし、対応できるようにいろんな練習をして、来季に向けてしっかり準備したいと思っています」

─ショートを守ることが増えたことで、新たに感じたことはありますか? また打撃に良い影響などは?

 「こうやって投げた方が相手は捕りやすいかな? だとか、ショートにしてもサード、セカンドを守るにしても、そういうことはより考えましたね。その方が相手も守りやすいと思いますし、自分の投げた球は自分では分からないですからね。この投げ方のほうが良いのかな、という送球の意識は強くなりました。ショートを守ることで、打撃には特に影響はなかったと思いますし、そこは開き直るというと変ですが、割り切ってプレーしていました」

(後編へ続く)