2025年シーズン終盤、厳しい戦いの中で首位打者、最高出塁率を獲得するなど、孤軍奮闘を見せた小園海斗。いまや名実ともにカープの主軸となり、日本代表にも名を連ねるなど世代トップを走り続ける背番号『5』が、注目を集めた今季のタイトル争いを振り返る。(全2回/第2回)

首位打者・最高出塁率のタイトルを獲得した小園海斗

◆終盤に見せたメンタルの強さ

─8月頃から打率、安打、出塁率と3部門のタイトル争いが注目されました。周囲のメディアも騒がしくなり『そっとしておいてください』という発言もありましたが、どのような心境で数字と向き合っていましたか?

 「夏頃、周囲から注目され始めた時期にそういう風に言わせてもらっていましたけど……もちろん意識はしていましたし(笑)、タイトルを取りたいなと思っていました。でも、チームが順位を争っている中で、勝ちにつながるようなバッティングをしないといけないと思っていました。結果的にチームがあのような順位になってしまったこともありましたが、最終的にタイトルを獲れたのは良かったです。本音を言うと、打率は3割1分は越えたかったなと思います。やっぱり、5月、6月頃に2割5分くらいまで打率が落ちてしまったので……そういうことがなければ、もう少し高い打率をキープできたと思うので、そこは反省点ですね」

─9月に打率を3割に乗せてから、一度も3割を割ることなく、シーズン終盤まで好調な打撃が続きました。

 「確かに感覚は良かったですが、順位争いもしていましたし、自分の打撃がチームに影響することがわかっていたので、より集中力は上がっていました。もちろん、タイトルもかかっていましたし、そこで自分の力がどれだけ試されるか? という気持ちがありました。個人としては順位争いをしながらもタイトル争いもできて充実感はあったので、良かったと思います」

─感じたことのないプレッシャーだったのではないでしょうか。

 「安打数は積み重ねですが、打率、出塁率は日々変動しますからね。打ち続けられれば良いですが、打てなければ率は下がります。僕は四球を多く選べて出塁できる選手ではないので……、正直タイトルは獲れないかもと思っていました」

─終盤、東京ドームでの巨人戦では泉口友汰選手と打率、出塁率の争いで一騎打ちの対決にもなりました。小園選手は本塁打を放つなど打率で突き放しました。

 「そうですね。泉口選手と目を合わせながら『打たないでよ』的な感じはありましたよ(苦笑)。僕としては、直接対決で離せればと思っていましたし、CS争いの相手でもありましたし、本当に大事な3連戦でした。そこでヒットを多く打つことができて、良かったです」

─9月26、27、28日の3試合はチーム状況、打率などの関係もあり、スタメンを外れました。

 「チーム状況も変わっていましたし、僕のためにそのような起用をしていただいたことは、本当にありがたいことでした。チームが勝っていて、出場できていれば一番良い状況だったと思いますが、その分、僕よりも若い選手が出場するチャンスもありましたし、みんな経験することができて良かったと思います。僕もまだまだ若いですけどね(苦笑)」

─10月3日のヤクルト戦(マツダ スタジアム)では、首位打者が確定的な中、2打席連続安打で最高出塁率を決めました。

 「特別意識することはありませんでしたね。普通に打って無理だったら無理で仕方ないと思っていましたし、自分で出塁率を獲りにいけたらな、という感じでした。監督にもそうやって話してもらえて、頑張れと言ってもらえていましたし、ポンポンと2打席連続でヒットが出たので、良かったです。ラッキーな当たりもありましたけどね(苦笑)」

─一塁ベース上では喜びを表現されていましたね。

 「順位は決まっていましたし、タイトルを獲りにいくという試合でしたし、それで達成できたのでうれしかったですね」

─シーズン最終戦(対ヤクルト・マツダスタジアム)では代打での1打席で結果は死球でした。

 「当たってしまいましたね(笑)。でも、出塁率が上がりましたからね。本音言うと、打率を3割1分にはしたかったので、絶対打ちたかったんですけどね。死球なので仕方ないです」

─結果的に個人として、首位打者と最高出塁率の打撃タイトルを獲得しました。どのように自己評価しますか?

 「打撃の主要タイトルの1つですから、やっぱりうれしいですね。でももっと高い率を打ちたかったです。出塁率はたまたま獲れただけです。ただ、今年はなかなか3割打者が少ない中で3割を打てたことは良かったです」

─今季、印象に残っている安打、試合があれば聞かせてください。

 「やはり、巨人戦(5月15日・マツダ スタジアム)での満塁ホームランは印象に残っています。初めての満塁弾でしたし、ヒーローインタビューでも言わせてもらったのですが、おじいちゃんの件もありましたからね。野球を始めるきっかけもそうですし、今も続けてこれたのも、おじいちゃんのおかげだと思っているので。そういう意味もあってすごく印象に残っています」

─チームは5位に終わりました。この結果をどう受け止めていますか?

 「今シーズンに関しては、昨年と違って9月だけが悪いわけではありませんでした。勝てなかった月は、勝てる試合で勝ちきれなかったりもしましたが、自分でも何で勝てないのか……わからないところはありました。ただ、試合に出ている選手が打たないと勝てません。投手がどれだけ点を取られても、相手チームよりも打って点を取れば勝てますからね。投手のみなさんは、逆に0点に抑えればと言いますけど、なかなか0点に抑え続けることは難しいですし、やっぱり野球は点取りゲームですから。僕としては、自分自身がもっとレベルアップして、みんなで勝ちにいくしかないと思っています」

─改めて、プロ7年目の2025年シーズンは、小園選手にとってはどんなシーズンでしたか?

 「いろんなことを経験できたシーズンでした。タイトルが獲れたことは良かったでけど、悔しい経験もたくさんあって、これは来年にまた活かされると思います。まだまだ弱いなと思っているので。もっと強い自分でいないとダメだなと思うので。もっと頑張っていきたいと思います」

─オフの強化ポイントがあれば聞かせてください。

 「オフに強化したいポイントは……やはり守備はもう少し頑張りたいですね。これに関しては数を受けるしかないですし、もっと動きも良くしていかないといけないので。ケガも途中ありましたし、体調管理も見直していきたいです」

─最後に、カープファンのみなさまにメッセージをお願いします。

 「今シーズンも熱い応援をありがとうございました。チームとしては本当に悔しい思いしかありません。もっと結果を残して、チームとして勝っていけるように来季も頑張ります!」

■小園海斗(こぞの・かいと)
2000年6月7日生・25歳・プロ7年目
報徳学園高-広島(2018年ドラフト1位)
2025年成績:138試合 521打数 161安打 打率.309 3本塁打 47打点 出塁率.365