思わず心を奪われる! カープの話題をゆる~くまったりと展開してくれる“オギリマワールド”。関東出身ながら中学生からカープファン。独自のタッチで描かれるイラストを交えたコラムでおなじみのオギリマサホが、新たなカープの魅力を切り取る。

 今回は、先日現役引退を発表した田中広輔選手についてを、オギリマ視点でゆる~く取り上げる。

大瀬良大地のブログから想像される“妖精の田中広輔”(イラスト・オギリマサホ)

◆田中広輔から感じる『頼もしさ』

 長らく球団に貢献したベテラン選手は、本人が納得できるところまでプレーして欲しいし、その上で引退を自ら決断したならば、球団には引退試合を開催してその労をねぎらってほしい。一ファンの勝手な意見にすぎないが、そう思う。

 2025年オフ、カープ3連覇時代を支えたベテラン選手が多く戦力外通告を受けた。上本崇司や磯村嘉孝は現役引退を決断し、球団スタッフになることが発表された。一方、松山竜平と田中広輔は現役続行を希望した。2人が「まだできる」と思って移籍先を探すのであれば、その決断を応援したいと思った。

 松山については昨年末、二軍公式戦に参加するオイシックス新潟アルビレックスBCに選手兼任打撃コーチとして入団することが決定した。一方、田中はどうなるのだろう……と思っていたところ、1月17日に『田中広輔、現役引退』のニュースが流れてきたのである。NPBでの現役続行を希望していた田中に対し、他球団からのオファーがなかったことから引退の決断に至ったとのことだった。

 引退に際して行われた記者会見で、田中は「まだやれるという思いもあったが、その気持ちだけではできないというのも理解している」と語っていた。正直不本意な部分もあったこととは思うが、それでも「後悔はない」とのことであった。

 田中広輔といえば、3連覇時代の『タナ・キク・マル』と呼ばれた『不動の一番打者』というイメージが強い。特に2017年には盗塁王と最高出塁率の2つのタイトルを獲得し、「田中が塁に出ることで得点につながる」という印象を多くの人に与えたのではないだろうか。

 特筆すべきは『連続フルイニング出場』で、2015年4月1日から2019年6月19日までの635試合は、歴代6位の記録である。ショートというポジションでのフルイニング出場は並大抵のことではないはずで、そのことは田中自身も引退会見で「フルイニング出場が途切れた試合」を一番の思い出として挙げ「ターニングポイントというか、僕の一番の強みが崩れた」と語っていることからもうかがえる。

 2019年、田中のフルイニング出場が途切れた理由は、開幕からの打撃不振であった。打率は1割台に低迷し、『不動の一番』であった打順も変わっていった。そのフルイニング出場が途切れる少し前、6月5日に私はメットライフドーム(現・ベルーナドーム)で行われた西武対カープの交流戦を観に行っていた。

 その日は序盤から大瀬良大地と十亀剣との投手戦だったが、田中は7回表に勝ち越しとなるタイムリー、8回表にも満塁ホームランを放って、この日だけで3安打5打点の活躍を見せた。その様子を現地で見ていた私は、とても頼もしい気持ちになったのを覚えている。

 思うに、田中広輔から感じる雰囲気というのは、その『頼もしさ』ではなかっただろうか。この日の先発・大瀬良も、のちに自身のブログでこんな内容を綴っていたことがある。

   

「試合中もそうですが、イニング間には良くこーすけが声掛けに来てくれます

妖精かのように気配を消して来ます

『ビビってんじゃねーよ 自分の球に自信持てなくてボールばっかり投げやがって』

なんだこのふざけた妖精(中略)

投げようとしてもストライクに入らねーんだよこの短足妖精、なんて思いながら投げてました」(2023年7月25日)

  

 われわれファンも、試合中にピンチを迎えた際、よく田中がマウンドに向かう様子を目にしていた。それは投手にとっても心強いものだったのではないだろうか。

 その頼もしい存在、田中が現役を引退するという知らせは、とても寂しい。しかし新しい世界でも、その頼もしさを存分に発揮してもらえればと願わずにはいられない。