◆「1」からではなく、「0」からのスタート

 タイムを正確に計るもう一つの理由は、常に全力でトライするためです。

 出たタイムはその場で選手やスタッフ全員にわかるように読み上げますので、各選手がベストの走りをしているのかすぐにわかります。自分が見られている事を意識して、手を抜かずに全力を出す事は、必ずその選手の能力アップにつながります。反復練習ですから目的意識と向上心がなければ飽きも出てきますし、余計に辛く感じるはずです。

 キャンプが選手という一つずつの商品をつくるという工場と考えれば、天福も東光寺もある生産ラインの一つとなります。天福ではバッティングとピッチングをしっかり鍛え、東光寺では守備・走塁をとことん教えられるというように、各球場の役割分担は昨年以上にはっきりしてきました。また我々各コーチの責任の所在も、今まで以上にはっきりしてきます。

 昔のようにアメリカなどの教育リーグに参加したり、あるいは他球団と練習試合をしたりなど、要するに「実践形式で練習してみては?」という方もいらっしゃるはずです。しかし我々はまだまだその段階ではないのです。練習で活躍の礎をしっかりつくってから実戦に臨む。ゼロからのスタートだから、失うものも何もないのです。

 「ここから全てが始まる」というよりもっと前の段階で、「ここで鍛えてから、やっと全てが始まる」という感じではないかと思います。

 「愚鈍」なまでに、一つひとつのプレーを、一日一日の練習を地道に繰り返してやり遂げていく事から、全てが前進していけるのです。その甲斐あって身につけた技術や体力、精神力は、長い期間その選手の血や肉になるはずです。

■三村敏之(みむら・としゆき)
1948年9月19日〜2009年11月3日、広島県出身
広島商高〜カープ(1967〜1983)。1966年ドラフト2位でカープに入団。遊撃手・三塁手としてプレーし、1972年にはベストナインにも選出。1975年の初優勝を主力として支えた。現役引退後はカープで指導者を務め、1994年からは一軍監督に就任。監督退任後は野球解説者・評論家として活躍した。

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