◆「一体感」のルーツ

 さらに、忘れてはならないのがレジリエンスの高いチームには、チームを立ち直らせるフィードバックシステムを起動するキーパーソンがいるということだ。

 1986年のカープで言えば、それはチームを支える守護神として機能した津田恒実だったのではないだろうか。

 また 1991年のカープも、シーズン序盤に病に倒れ、必死に闘病を続ける津田への想いを力に最大7.5ゲーム差をひっくり返して逆転優勝を成し遂げた。この年に見せた「一体感」こそがカープのレジリエンスを高める最大の持ち味といえるのではないだろうか。

 いくら打たれても、いくら打てなくても、津田のように立ち上がり、ファイティングポーズを崩してはならない。その闘う姿勢こそがチームに一体感をもたらすのだ。カープの再起に向けて『弱気は最大の敵』なのだ。

 そしてもう一つ、復興・創設期を支え、平成の低迷期を応援し続けたカープファンは最もレジリエンスの高いファン(キーパーソン)といえるだろう。

 カープの再起に向けて『カープファンは最大の味方』なのだ。

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高柿 健(たかがき けん)
広島県出身の高校野球研究者。城西大経営学部准教授(経営学博士)。星槎大教員免許科目「野球」講師。東京大医学部「鉄門」野球部戦略アドバイザー。中小企業診断士、キャリアコンサルタント。広島商高在籍時に甲子園優勝を経験(1988年)、3年時は主将。高校野球の指導者を20年務めた。広島県立総合技術高コーチでセンバツ大会出場(2011年)。三村敏之監督と「コーチ学」について研究した。広島商と広陵の100年にわたるライバル関係を比較論述した黒澤賞論文(日本経営管理協会)で「協会賞」を受賞(2013年)。雑誌「ベースボールクリニック」ベースボールマガジン社で『勝者のインテリジェンス-ジャイアントキリングを可能にする野球の論理学―』を連載中。