組織論・戦略論 などの視点から、近年のカープの強さ・魅力の秘密を紐解いていく、広島アスリートマガジンwebでしか体感できない講義・『カープ戦略解析室』。案内人は、高校野球の指導者を20年務め、現在は城西大経営学部准教授として教鞭をとるなど多彩な肩書きを持つ高柿健。12回目の今回は、今のカープに求められる「チーム·レジリエンス」について考えていく。

 

◆マウンドに遺された闘球の残像

 2020年9月1日、阪神で長らくストッパーを務めた藤川球児が今季限りでの現役引退を発表した。『火の玉ストレート』と称された彼の直球は、打者が直球と分かっていても打てない浮き上がる魔球だった。

 34年前、カープの終盤のマウンドにも同じく、力強い直球を投げる鬼神がいた。窮地で追い込まれれば追い込まれるほど彼の直球は勢いを増し、唸りを上げて空振りを奪った。

 気の弱さを微塵も感じさせない気迫の投球スタイルは、窮地のナインを鼓舞し、ファンを魅了した。彼ほど、逆境に屈しないカープファンの気概を球に込めてくれた投手はいないだろう。

 そう、彼とは“炎のストッパー”津田恒美だ。

 津田は脳腫瘍を患い、1993年に32歳の若さで急逝。闘球の残像をカープのマウンドに遺し、永遠の守護神となった。