カープ・辰見鴻之介が、プロ野球新記録となる代走盗塁26を達成した。楽天から現役ドラフトで加入した辰見を支え、指導してきたのが赤松真人一軍外野守備・走塁コーチだ。現役時代の通算盗塁数は136。自身も代走の切り札として活躍したスピードスターは、現在カープの一軍外野守備・走塁コーチを務めている。

 今回は、赤松コーチが現役時代に語っていた『盗塁論』を再編集して掲載する。3年連続盗塁成功率8割超をマークしていた2013年、脚のスペシャリストが語っていた「盗塁においてもっとも大切」なものとは。

(『広島アスリートマガジン』2013年6月号掲載記事を再編集)

2010年にはDeNA戦で見せた『スパイダーマンキャッチ』が話題に。同年、ゴールデングラブ賞にも輝いた

◆重要なのは、入念な準備と『スタート』

—— 今シーズン(取材時の2013年)は、代走や守備固めなど途中からの出場が多くなっています。試合に向けた準備はこれまでと変わりましたか?

「それほど変わりませんが、全ての準備をしなければいけないスタメンと違って役割が明確になっている違いはあります。試合前にまず対戦相手の先発から中継ぎまで投手のビデオをチェックします。最近は癖のない投手が多くなってきているので、癖だけでなくどの捕手と組んだときにどういう配球になっているか確認します。配球を調べることで、捕手が二塁へ送球しやすい外角のときは自重し、内角のときはストレートでも捕手が投げ難いのでスタートを切れるんじゃないかというイメージを考えることがメインになります」

—— 盗塁において、3S(スタート、スピード、スライディング)が大事だと言われます。

「盗塁はスピードではないですよ(笑)。スライディングとスタートかな。いや、スライディングもごまかせるので、一番はスタートです。ただ、スタートが大事とは言っても、その前の準備が実は一番大事なんですよね」

—— それほど準備が重要ということですか?

「3Sなんて関係ありません。スタートはしっかりとした準備がないと切れませんからね。どれだけクイックが遅い投手でも、けん制が早ければなかなかスタートは切れません。反対にしっかりとした情報があってスタートを切れれば、僕はスライディングしなくてもセーフになると思います」

—— どれだけ3Sの能力が高くても、データがなければ盗塁は難しいですか?

「タイムって、ある程度決まっているんですよ。投手のクイックが約1.2秒ですが、捕手が捕ってから送球が二塁に届くまでが2秒。単純に考えて計3.2秒で、走者が二塁に到達するのも3.2秒なんです。そう考えると、盗塁成功率って5割なんですよね。でも成功率が5割より高い選手が多いのは、送球がズレることもありますけど、癖や配球などのデータによるところが大きいんです。事前の情報が何もないガチンコ勝負をしても、良い送球がいけばアウトになってしまうんです」