現役時代は二度の盗塁王に輝き、引退後は指導者として多くの名選手を育成してきた福地寿樹コーチ。2023年シーズンに指導者としてカープに復帰すると、二軍コーチを経て今季は一軍打撃チーフコーチに就任した。
その福地コーチが選手と対峙する際、大切にしているのは『一人ひとりに合った伝え方をすること』だという。指導歴13年目を迎えたコーチの、指導に込められた思いを聞いた。(全3回/第2回)
◆情報の多い時代だからこそ、整理し導くことも重要に
―今は情報が多い時代でもあります。指導者として、選手との向き合い方や指導方法で変化を感じる面はありますか。
「さまざまな動画も含めて、いろんな情報が入ってきます。それは良くも悪くもです。そういう動画を見ていると、全て良く見えてしまいますし、自分に合っていないものまで取り入れてしまうことがあります。そこで選手に対して『ちょっと待ってくれ、何がやりたいんだ……?』と思うこともあります。情報が多いのはとても良い事ですが『自分がどういう方向に進みたいのか』、そこを整理する必要があると思っています」
―ベテラン選手についてはどのようなアプローチなのでしょうか。
「ベテランはそれぞれベースを持っていますし、実績もあるので全く違いますね。難しい顔をして練習していたら『どうしたの?』『何が違うの?』と声をかけます。ベテランは自分の中で『こういう野球をしたい』というものがあるので、そこに対して『こうした方が良いんじゃないか』とアドバイスをする準備をしておく、という感じです」
―若い選手とのコミュニケーションは、昔と比べて難しくなったと感じますか。
「難しくはないですね。ただ、アプローチや言葉の使い方は変わってきていると思います。今の選手たちはいろんな情報を持っていますから、まずは何を知っていて、どう考えているのかを聞くことが大事だと思います。その上で必要なことは伝えるし、『それは今はいらない情報だよ』と整理してあげることもあります。そうやって会話をしながら、選手に合った伝え方を考えています」
―特に若手については、どんな目線で接しているのでしょうか。
「プロ野球選手というより、一人の人間、一人の社会人として見ています。社会人として『それは違うんじゃないの?』という基準もあります。子どもとして見ているわけではないですから。ただ、子どもっぽい部分がある選手には、違う接し方をするケースもあります。性格はみんな違うので」
―人によって厳しさも変えるわけですね。
「変えますね。甘やかして伸びる選手もいるし、甘やかすとダメになる選手には、とことん厳しくします。『なんで僕だけ厳しいんだ』と思うかもしれないですけどね。子育てではないですけど、一人ひとりを見ています。大変ですけど、楽しいですね」
―2013年から指導者として長く経験を積んでこられています。指導者として大切にしていることを聞かせてください。
「妥協しないことですね。スポーツなので。『ここで良いかな』という瞬間は必ず出てきます。そこで、もう一歩までできるかどうか。意外と見ていないようで、見ている人はちゃんと見ていますから」
―選手にも『見ている人は見ている』と伝えるのですか?
「普段の練習の姿を見ている人はいます。手を抜いていたら『あいつはダメだな』と思われるかもしれません。逆に『あいつはしっかりやっているから、獲得したい』と他球団に思われるかもしれません。どこにチャンスが転がっているか分からないものですからね」
(第3回へ続く)
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