■寒さを味方につけて逆襲なるか
それ以上の厚着姿の選手が多数見られる機会、それは例年11月、勤労感謝の日前後に行われるファン感謝デーではないだろうか。我々がその年のユニフォーム姿の選手達を目にすることができる最後の機会でもある。特に動きの少ないトークショーに登場する選手達は、軒並みフリースパーカやウィンドブレーカーを着用して並んで座っており、その姿はまさに整列するふくらスズメのようだ。
ところで、出場している選手達が寒いということは、見ている観客の側も寒いということである。昔は防寒用の公式カープグッズと言えばテカテカした素材のグランドコートぐらいであったが、現在は選手モデルのウィンドブレーカーやフリース、マフラーやニットキャップ、イヤーマフ、手袋などの小物まで、さまざまな防寒グッズを揃えることができる。
また近頃では、球場で販売されるフードメニューにも「寒さ」を意識したものが登場している。例えば一昨年、マツダスタジアムでは10月17日から「CS応援メニュー」として「もつ汁」や「ホットレモンティー」「ホットワイン」などが発売された。
10月初旬の現在、なぜ私がこのように「寒さ」を気にしているのかと言えば、今シーズンが変則的な日程だからである。例年であれば、この時期は既にレギュラーシーズンが終わる頃であり、寒さを気にするのはクライマックスシリーズや日本シリーズに出場するチームのファンのみであった。ところがコロナ禍に見舞われた今シーズン、日程は大幅に後ろにずれ込み、カープの最終戦も11月7日のマツダスタジアムでの阪神戦(予備日含めず)となっている。これは明らかに寒い。
今シーズンのカープは、暑い時期の戦績があまり振るわなかったように思う。果たしてこの10月~11月、寒さを味方に付けることができるのかということに期待しつつ、個人的には「今シーズン、菊池涼介はいつネックウォーマーを巻き始めるか」ということに注目していきたいと思う。
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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。