またこの試合で活躍したのが、リーグ戦で今季初スタメンの座を勝ち取ったMF森島です。ACLでゴールを決め、自信を持ちリーグ戦に出場できたことは、個人としてもチームとしても非常に意味のあることでした。切れ味抜群のドリブル、質の高いスルーパスなど連敗中のチームにはなかったハツラツとしたプレーを見せてくれました。元々ドリブルの突破力に定評がある選手でしたが、浦和戦では相手から体を寄せられても倒れず“前に前に”という意思を強く持っており、成長の跡を見せてくれました。

 この試合を受けて次節の札幌戦では、私自身希望を持っていたのですが、結果は敗戦。この結果の受け止め方はそれぞれあると思いますが、私は『もったいない試合だった』と感じました。浦和戦で新しい形での得点も生まれ、連敗も脱出、再浮上にはうってつけの試合でしたが、どうにも前半からサンフレッチェの様子がおかしかったように感じました。自分たちの力を出し切ることができずに、ただ時間だけが過ぎ負けてしまいました。具体的に課題を指摘するならば、6月上旬までのチームは守備に対する意識が強過ぎたように思います。昨季の苦い経験や、ここまでチームを構築する上でまず第一に守備を固めていくという意識を持っていたことは理解できるのですが、札幌戦のようにほとんどチャンスがつくれないとなると考えものです。サポーターにとっても不満がたまる、不完全燃焼を感じる試合になってしまったのではないでしょうか。


(広島アスリートマガジン2019年7月号から一部抜粋・続きは本誌にて掲載)


▼ 吉田安孝(よしだ やすたか)
1966年11月22日生。広島県出身。元サンフレッチェDF。現在は広島テレビ「進め! スポーツ元気丸」などのサッカーコメンテーターとして活躍中。