カープ一筋23年の佐々岡真司氏を新監督に迎え挑んだ球団創立70周年の記念シーズン。結果は52勝56敗12分けで5位。2年連続のBクラスで2020年の戦いを終えた。ここでは、数々のドラマが繰り広げられた2020年ペナントレースの戦いを振り返っていく。今回は、8月2日の巨人戦(東京ドーム)。遠藤淳志がプロ初完投勝利を飾った試合をお送りする。

8月2日の巨人戦。遠藤淳志投手が9回を本塁打による2点に抑え、プロ初完投勝利で今シーズン2勝目をあげた。

◆高卒3年目の先発挑戦。自信を深めた優勝チームからの無四球完投勝利

 今季6度目の先発マウンドにあがった遠藤淳志。2回裏に大城卓三に本塁打を打たれるも、3回からは3イニング連続で三者凡退。捕手・坂倉将吾と息の合ったコンビで、前日11点を奪った強力巨人打線を抑え込んだ。

 カープ打線は初回、2死一塁から鈴木誠也が2試合連続となる先制2ラン。2回は西川龍馬の適時打、3回は遠藤自らが2点タイムリーを放ち、3回までに8安打1本塁打で5点を奪うと、6回には長野久義がタイムリー、7回には西川が3ランを放ち遠藤を援護した。

 遠藤は7回を80球という理想的な球数で投げ終えると、8回2死三塁のピンチはパーラを空振り三振に。そのまま9回もマウンドに上がると、最後まで投げきりプロ初完投勝利。9回118球を投げて打たれた安打はわずか5本。本塁打による2点に抑える無四球ピッチングで今シーズン2勝目をあげた。

「先輩方からは『1イニング1イニング、1人1人全力で勝負していって、スタミナが切れたらそれで仕方ないから、そこからまた課題を見つけていければいい』とアドバイスをいただいています。なので、1イニング毎回、全力投球で投げていくという気持ちを忘れないようにしています」

 大瀬良大地や野村祐輔といった先輩投手からのアドバイスも糧にして、全力投球で立ち向かったマウンド。先発初勝利をあげた7月12日の中日戦(ナゴヤドーム)で得た自信を深める完投勝利となった。

 遠藤はその後も先発ローテとして投げ続け、シーズン最終登板となった11月4日の巨人戦(マツダスタジアム)でも、リーグ王者の巨人を相手に9回1失点に抑える投球でプロ2度目の完投勝利をあげた。

「先発として投げさせてもらう中で、やはり強い気持ちが一番大切なんだと感じています。昨シーズンは中継ぎとして堂々と投げることができていましたけど、(今シーズン当初は)先発で投げる中で打たれてしまったり、長いイニングを投げることができなかったときに、自分に自信が持てなかったことがありました。あと、対バッターではなく、自分との戦いになってしまっていると改めて感じました。だからこそ、強い気持ちを持って、プレーボールがかかった1球目から自信を持って打者に向かって投げられるようにしたい。言い方を変えれば、先発として責任感が出てきたからこそ、そう思うようになったのかもしれません」

 2020シーズン、開幕から一度も先発ローテを外れなかったのは、九里亜蓮と遠藤の2人だけ。今季は苦しい投球が続いたが、先発ローテを外れることなく粘りの投球をみせ「1年間先発ローテの一員として投げ続けること」と自身が掲げた目標を成し遂げた。

 先発初挑戦の1年は、19試合に先発し5勝6敗、防御率3.87。前例のないシーズンを投げ抜いた、高卒3年目右腕の成長は、V奪回を目指す来シーズンにつながっていくはずだ。