カープ一筋23年の佐々岡真司氏を新監督に迎え挑んだ球団創立70周年の記念シーズン。結果は52勝56敗12分けで5位。2年連続のBクラスで2020年の戦いを終えた。ここでは、数々のドラマが繰り広げられた2020年ペナントレースの戦いを振り返っていく。

 今回は、8月23日の巨人戦(マツダスタジアム)。“打てる捕手”として大きく飛躍した坂倉将吾が決勝アーチを放った試合をお送りする。

8月23日の巨人戦。同点で迎えた8回、坂倉将吾が代打で登場し2号ソロ。この1点が決勝点となり、チームは巨人戦3連勝を果たした。

◆初球から迷うことなく振り抜いた会心の一打で逆転勝利

 リーグ連覇を果たした巨人に、今シーズン唯一の同一カード3連勝を果たした8月21日~23日の巨人戦。3タテを決める一打を放ったのはプロ4年目の坂倉将吾だ。

 3連戦初戦を7対5、2戦目を10対4。2試合続けて序盤で大量得点を奪い2連勝。そして迎えた23日の第3ラウンド。試合は1点を争う好ゲームとなった。

 先発の遠藤淳志が、3回に坂本勇人にタイムリーを打たれ1点を先制されたが、その後は7回まで追加点を許さぬ投球を披露。2回以外、毎回のようにランナーを背負ったが、粘りのピッチングで切り抜け先発の役目を果たした。カープ打線の反撃は4回。1死から鈴木誠也が同点ホームランを放ち、プロ初先発・直江大輔に、カープの4番として洗礼を浴びせた。

 同点のまま試合は進み、迎えた8回裏。先頭打者として打席に入った代打坂倉が、この回からマウンドに上がった大竹寛の初球の変化球を振り切ると、打球は右中間スタンドへ。今季2号が貴重な勝ち越しアーチとなり、その1点を守護神フランスアが守りきった。

「今季、印象に残る一打で、一番最初に頭に浮かぶのは、この日、大竹さんから打ったホームランです。代打で出番をもらって、初球からしっかり振っていくことができました。結果的にこのホームランが決勝点となり、巨人に3連勝することができたので、すごく良い打席になったと思っています」

 今シーズン、3番打者として3試合、5番打者として12試合、クリーンアップを任され、ベンチスタート時は左の代打の切り札として活躍。“打てる捕手”として存在感を示した坂倉にとって、8月23日の決勝アーチは手応えを感じる一打となったようだ。今シーズンの打撃成績は、昨シーズンから大きく数字を伸ばし、安打・本塁打・打点などすべての面でプロ入り最高の数字を記録。得点圏でも3割を超える打率を残した。

「昨季から3倍以上の打席に立たせてもらい、数多く打席に立つ難しさであったり、できていたことが急にできなくなる難しさであったり、いろんなことを勉強させてもらった一年でした」

 捕手一本で勝負した守備においても、6月25日の巨人戦でプロ初のスタメンマスクをかぶると、以降も着実に出場機会を得て、計47試合でスタメンマスクをかぶり投手陣を牽引した。

「これまでの3年間とは、まったく違ったシーズンにできたと思っています。ミスも成功も含めていろんな経験ができたので、これからの野球人生に生かしていかないといけません。来年はさらに成長した姿をファンの方にみせたいですし、今年以上に、チームの勝利に数多く貢献していきたいと思っています」

 19年にわたりカープを支えた石原慶幸が現役引退したことで、坂倉にかかる期待はさらに大きいものになる。“打てる捕手”として、確かな成長を遂げた今季の経験を、V奪回を目標に掲げる来シーズンへとつなげていく。

●試合結果
8月23日
カープ2ー1巨人
勝:塹江 3勝1敗 
S: フランスア 1敗6S
負:大竹 1勝1敗
本塁打:(広)鈴木誠13号、坂倉2号