◆野球中継で定着した「満塁斬りのレン」「火消しのレン」

 2015~16年、肩の故障などで計13登板に終わった中田廉は、オフの肉体改造を経て2017年に復活した。17年5月の段階で既に4度の満塁のピンチに登板し、テレビでは「中田廉 満塁斬りの思考」という特集が組まれたほどである(RCCテレビ「Eタウン・SPORTS」2017年5月27日放送)。

 またこの際のインタビュアーであった坂上俊次アナが、野球中継で幾度となく「満塁斬り!」と表現したこともあり、中田廉には「満塁斬りのレン」「火消しのレン」という二つ名が定着した。

 満塁のピンチに颯爽と登場し、相手をバッタバッタと切って取る。特にこの年の7月30日、ヤクルト戦の7回表に無死満塁のピンチで登板し(この時点でシーズン7回目の満塁時登板であった)、無失点に抑えたことで「火消しのレン」の印象はより一層強いものとなった。

 しかし2018~19年シーズンは調子が上がらず、計23登板に終わった。前述の「中田廉を大切にしよう友の会」も、こうした状況の中で生まれた言葉である。

 そのような中田廉が、今シーズンは7月末から徐々に登板機会を増やしていった。当初はリードされている展開での終盤に、1イニングを投げる中継ぎとしての起用であった。ところが9月12日、13日の阪神戦ではいずれもイニングの途中、ランナーが塁上にいる状態で登板し、無失点に抑えた。「火消しのレン」の面目躍如だ。

 結果として、今シーズンは32試合に登板した中田廉が、満塁で投げた場面は4度ある(自ら招いた満塁も2度あるが)。そのうち失点をしなかったのが3度なので、満塁消火率としては75%といったところか。

 しかし唯一の満塁からの失点である11月10日のヤクルト戦は、大量リードのある中での無死満塁で登板し、犠牲フライ2本で2点を失ったというものなので、試合に影響しなかったという点では消火率100%と見て良いかも知れない。やはり中田廉は「火消しのレン」なのである。

 先日、中田廉が右膝半月板の手術をしたという報道があった。オフの間に体を万全にし、また来シーズンに「火消し」の姿が見られることを、自称「友の会」会員として今から楽しみにしている(ピンチは無いに越したことはないけれども)。

“火消しのレン”イメージ図

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。