佐々岡真司新監督の下、V奪回を目指した2020年シーズン、カープは苦闘の末に5位という結果に終わった。そんな中、最も輝きを放った選手がドラフト1位ルーキーの森下暢仁だろう。

今季18試合に登板して10勝3敗、防御率1.91と大活躍を見せた森下投手

 シーズン最後の登板後に率直な気持ちを聞くと、こう答えてくれた。

「あっという間に終わったなという感じと、一日一日を必死にやったなという1年間だったと思います」

 開幕から登板した18試合は全てに先発。結果的に10勝3敗、防御率は最後までタイトル争いを演じ、リーグ2位となる驚異の1.91と、ルーキーとして、文句のつけようのない数字を残した。

 振り返れば、今シーズンのカープ投手陣は誰もが予想できない事態が立て続けに起こった。絶対的エースとしての役割が期待された大瀬良大地の故障離脱に、左のエースとして実績十分のK・ジョンソンの予期せぬ絶不調。さらに先発の柱となるはずだった野村祐輔の離脱……。

 誰もが経験したことのないコロナ禍の影響からか、先発ローテーションの柱となるべき投手たちは軒並み数字を残すことができなかった。そんな中で即戦力ルーキーである森下は、シーズンを通じてその真価を発揮した。

 初めて経験するプロ野球レギュラーシーズンは開幕が6月までズレ込むこととなり、開幕直前の練習試合では打ち込まれる場面が続いてしまった。

「開幕前の練習試合2試合では打たれてしまいましたが、しっかりとした球を投げられていると思っていました。なので、練習試合で打たれてしまった結果をシーズンに入って出さないようにしたいと思っていました」

 シーズンに向けて不安要素を抱えていたものの、順当に開幕ローテーション入りし、プロ入り直後から口にしていた最初の目標を達成した。開幕3戦目、6月21日のプロ初登板では白星こそつかなかったが、7回無失点と上々のデビューを果たすと、2度目の登板となった6月28日の中日戦で待望のプロ初勝利を記録した。

「初勝利に関しては、率直に勝てて良かったなという気持ちと、最後まで1人で投げ切りたかったなという両方の気持ちが出た試合でした。でも、勝てて本当に良かったなという気持ちが強かったですね」

 9回に失点し完投こそ逃したものの、8回2/3を投げて3失点、136球の熱投だった。だが、初勝利以降7月31日までは負けと勝ちが交互に続き、7月10日にはコンディション不良で一軍登録を抹消。ただ、結果的にシーズンを通じて波に乗れなかったのはこの時期だけかもしれない。あの時の森下はこんな思いを抱いていたという。

「やはり、チームに迷惑をかけてしまったという思いがありました。ですので、これからはしっかりと離脱しないようにやらなければいけないと改めて思わされました」

 プロ初登板から5試合を終えた7月31日時点で2勝2敗、防御率2.56。ルーキーとして、まずまずの結果を残していた森下。8月に突入すると、上昇気流に乗っていった。

(vol.2に続く)