佐々岡カープ元年、主力選手が故障などで苦しむ姿が目立つ中で、多くの若手選手が躍動した。ここでは「初」をキーワードに2020年シーズンの佐々岡カープで生まれた記録を振り返っていく。

 今回は、プロ2年目の右腕・島内颯太郎がプロ勝利を飾った10月31日の中日戦(ナゴヤドーム)を振り返る。

10月31日の中日戦、7回1死二、三塁の場面で登板した島内颯太郎投手。好救援をみせると直後に打線が逆転し、背番号43にプロ初勝利が舞い込んだ。

◆変化を怖れない気持ちが生んだ、うれしいプロ初勝利

 ルーキーイヤーの2019年は、一軍で25試合に登板した島内颯太郎。力強い速球を武器に、存在感を発揮した。さらなる成長が期待された2020年だったが春季キャンプは二軍スタート。開幕一軍入りもならなかった。

 課題は技術面にあった。直球と変化球のリリースポイントが違うことで、打者に狙いを絞られていた。この課題を克服するため、島内には、今年3月に発足した通称『2.5軍』での練習が課された。二軍でもなければ、リハビリ中心の三軍でもない。2.5軍は、各選手が抱える課題克服に重点的に取り組む場所。ここで、投球の回転数を計測できるラプソードや映像をフル活用し、投球フォームを徹底的に見直した。

 その甲斐あって、島内のリリースポイントは安定し、フォームを見直したことで球速も格段にアップ。二軍の試合で進化した姿をみせ、7月7日に一軍昇格が決まった。

 今季一軍初登板は7月9日のDeNA戦(マツダスタジアム)。島内はこの試合にリリーフ登板し3つのアウトをすべて三振で奪う快投を見せると、8月中旬までに登板した14試合で失点したのはわずか1試合と抜群の安定感を披露。以降は、一軍ブルペンに欠かせない存在へと成長した。

 そして迎えた10月31日の中日戦。1点ビハインドの7回、1死二、三塁のピンチの場面で、島内が今季36試合目のマウンドに上がった。3番・阿部寿樹を内野ゴロに打ち取ると、4番・A.マルティネスは、力で押す投球でライトフライ。わずか5球でピンチを脱した。すると、次の回に打線が一挙7点を奪取し逆転勝利。好救援を果たした島内にうれしいプロ初勝利が転がりこんだ。

「大学のときも、スピードが出なくて伸び悩んでフォームを変えたことがありました。試行錯誤の中で球が速くなりました。今回も、球速ばかりが目的ではありませんが、フォームを変えることで変化できた部分があります。あまり変わることを怖れないようにと思っています」

 変化することで勝ち得たチャンス。そのチャンスを生かし、島内は、ルーキーイヤーを上回る38試合に登板。リリーフ投手として確かな成長を示した一年となった。