プロ1年目から18試合に先発し、1完封を含む2完投で10勝3敗、防御率1.91。文句のつけようがない成績で、カープ選手としては2014年の大瀬良大地となる「新人王」を獲得した森下暢仁。ここでは本人のコメントと共に、輝きを放ったゴールデンルーキーのプロ1年目を振り返る。

 2回目となる今回は、プロ初勝利からコンディション不良による離脱、そしてプロ初完封を飾るなど月間3勝を挙げた8月までの軌跡にスポットを当てた。

森下暢投手がプロ初完封を記録したのは、8月14日の阪神戦。127球を投げ、2安打無四球と圧巻の内容だった。

◆森下の安定感ある投球を引き出した坂倉の存在

 6月21日のプロ初登板で7回無失点と上々のデビューを果たすと、2度目の登板となった6月28日の中日戦(ナゴヤドーム)で待望のプロ初勝利を記録した。完投こそ逃したものの、8回2/3を投げて3失点。無観客試合とはいえ、観る者を魅了する136球の熱投だった。

「初勝利に関しては、率直に、勝てて良かったという気持ちと、最後まで1人で投げ切りたかったなという両方の気持ちがありました。でも、勝てて本当に良かったなという気持ちが強かったですね」

 待望の初勝利挙げた森下暢仁だが、この登板以降、背番号18に試練が訪れる。本拠地登板となった、プロ3戦目の7月9日のDeNA戦(マツダスタジアム)は負け投手に。以降は7月末まで勝ちと負けが交互に続き、7月10日にはコンディション不良で一軍登録を抹消された。

「(この時期は)チームに迷惑をかけてしまったという思いがありました。なので、これからはしっかりと離脱しないようにやらなければいけないと改めて思わされました」

 ドラ1右腕に暗雲が立ち込めたが、結果的にシーズンを通して先発ローテを外れたのはこの時期だけ。試練の7月を乗り切ると、8月以降は上昇気流に乗った。

 8月7日の阪神戦(マツダスタジアム)では粘りの投球で本拠地初勝利。打ってはプロ初安打を記録し、3勝目をマークした。続く8月14日の阪神戦(京セラドーム)では、127球を投げ、2安打無四球の内容でプロ初完封。8月21日の巨人戦(マツダスタジアム)では、首位チームを相手に8回1失点のピッチングを披露し、5勝目を飾った。

 躍進を遂げた8月からは、1学年下の坂倉将吾がルーキーの快投を支えた。8月7日の阪神戦で初めてバッテリーを組み、勝利すると、それ以降、最終登板まですべて坂倉とバッテリーを組むことに。球を受け続けた坂倉は森下の印象をこう語る。

「森下さんの良さは全部の球種でバッターと勝負できる点だと思います。リードする際に特別なことはありませんが、森下さんを見ているというよりは、どちらかと言えばバッターの反応を見て、球種を選ぶように心がけています。球種やコースがかたよってくると、狙い撃ちされやすくなると思うので、かたよらないように、ストライクゾーンを広く効果的に使うことを意識していました」

 坂倉はイニング間、密にコミュニケーションを重ねながら、森下とのコンビネーションを深め、白星をアシストし続けた。森下の8月の月間成績は、4試合に先発し1完封を含む3勝(0敗)。防御率は1.80と新人とは思えない安定感あるピッチングを継続。徐々に真価を発揮していくことで、新人王争いの大本命に躍り出る、シーズン終盤での圧巻の投球へとつながっていく。(③に続く)