プロ1年目から18試合に先発し、1完封を含む2完投で10勝3敗、防御率1.91。文句のつけようがない成績で、カープ選手としては2014年の大瀬良大地となる「新人王」を獲得した森下暢仁。本人のコメントと共に輝きを放ったゴールデンルーキーのプロ1年目を振り返る。

 最終回は、圧巻の投球を披露したシーズン後半戦の活躍にスポットを当てた。

10月24日のDeNA戦に先発した森下暢仁投手は、プロ2度目の完投勝利&決勝打を放つ活躍を見せ、自らの力で“新人王”を手繰り寄せた。

◆「一日一日が必死でした」10勝&防御率1点台をマークし有終の美

 夏場以降、順調に勝ち星を積み重ねていく中で、森下暢仁がプロ入り前から目標に掲げてきた『新人王』争いの注目度が次第に増していった。ライバルとなったのは巨人の高卒2年目・戸郷翔征。8月を終えた時点で戸郷は7勝2敗。一方の森下は5勝2敗。勝負の後半戦、ライバルの存在も力に変えて、森下がさらなる成長を遂げていく。

 9月こそ1勝に留まったものの、10月に入ると抜群の安定感を誇る投球を披露。10月3日のヤクルト戦(神宮)、7回無失点で7勝目を挙げると、10月10日のヤクルト戦(マツダスタジアム)は6回無失点で8勝目をマークし、勝ち星で戸郷と並んだ。

 そして10月24日のDeNA戦(横浜スタジアム)では、自ら決勝打を放つ活躍をみせ、9回1失点の快投。プロ2度目の完投勝利で9勝目を挙げ、カープの球団新人では、1997年の黒田博樹以来、セリーグ5球団からの勝利を記録。戸郷との新人王争いでも一気に優位に立った。

 11月1日の中日戦は8回無失点。明治大の先輩である柳裕也との投手戦を制して、節目となる10勝目と共にシーズン規定投球回数も達成。今季の活躍を象徴するピッチングで、今シーズンの最終登板を終えた。

「プロ初登板にプロ初勝利も含めて、色々なことが印象に残っています。柳さんとの投げ合いもそうですし、いろんな選手と対戦することもできました。そういうシーズン1年間すべての経験が印象に残っています」

 数々のインパクトを残した森下のルーキーイヤー。途中、コンディション不良で一軍登録を外れることはあったが、終わってみれば、開幕ローテを任された先発投手として、誰もが納得する結果を残した。

 なかでも圧巻はシーズン後半の成績だ。5試合に先発した10月・11月は完投勝利を含む4勝(0敗)を挙げ、37イニングを投げて防御率は0.24。自責点はわずかに1と驚異的な成績を残し、10月・11月度の『月間MVP』を受賞した。

「ケガなく1年間プレーするためには、どんなことをしなければならないか、勝つためには何を考えなければならないのかを考えさせられたシーズンでした。また、先発を任される以上、しっかりと準備しなければ勝てないということも分かりました。振り返ると、あっという間に終わったという感じ。一日一日を必死にやったなという1年間でした」

 大瀬良大地をはじめ、主軸先発投手が3人も離脱するなか、投手陣の救世主としての活躍を見せた森下。今季のカープ投手陣のMVPと言っても過言ではない活躍だった。そして12月17日に行われたNPBアワードで、カープでは10人目となる『セ・リーグ最優秀新人賞』を受賞した。

「このような状況で1年目から野球ができ、新人王を獲ることが出来てすごく嬉しく思っています。今年は良いシーズンを送ることができたので、来年はもっと良いシーズンになるよう、そして皆さんの期待に応えられるように頑張りたいと思います」

 最高の形で初めてのシーズンを戦い終えた背番号18。先発ローテの真の柱となるために、来年も結果にこだわり、飛躍を続けていく。