投打の歯車が噛み合わず、2年連続Bクラスとなった2020年のカープ。ここではOBの大野豊氏が打線に焦点を絞り、カープの課題と展望を語っていく。

チームトップの25本塁打を放った鈴木誠也選手。新加入するクロン選手にも“長距離砲”としての活躍が期待される。

◆2021年型カープ打線に求めたいのは…… 

 まず今季の打線について、気になった点は“迫力不足”というものが挙げられます。鈴木誠也が25本塁打をマークしましたが、打線全体で考えるともう一人ぐらい“大砲”と呼べる存在が必要なのではないでしょうか。もちろん、大砲ばかり並べて機動力が使えなくなってしまっては、カープの魅力は半減してしまいますし、当然“流れ”や“つなぎ”も重要ですが、本塁打には試合の雰囲気を大きく変え唯一無二の力もあります。

 そういう意味でカープが獲得を発表したクロンは大いに期待したい存在です。どれだけ守備力があるかは未知数ですし、内野陣にはライバルが多くいますが、本塁打を量産してくれれば、試合の勝敗は大きく変わってくるはずです。たとえば試合終盤のケースで、一発を警戒しなければならない存在が打線に組み込まれているのは相手投手にとってもやりづらい部分はあるでしょう。

 私も現役時代は数々の外国人選手と対戦してきましたが、やはりパワーのある打者と対戦するということは一つの投げミスが即失点につながってしまうだけに緊張したものです。ただ外国人選手には大きな“穴”があるケースも多く、そこに投げ切ることができれば大きな痛手にならないので、怖さがある一方で攻めやすい部分もありました。

 外国人選手が日本で成功するかどうかの鍵は、投手が投げる変化球に対してどのような対応をしていくかだと思います。苦手なコース、変化球を一朝一夕で打てるようになるというのは難しいだけに、それを悟らせない、あるいに安易に手を出さないという我慢強さ、見極める力が必要です。

 上位から切れ目のない布陣を展開した上で、要所に長距離砲を配置することで、より強力な打線を構築できるようになります。クロンには、自身の獲得にも携わった駐米スカウトを務めるエルドレッドばりの活躍を期待したいと思います。