◆内川聖一の獲得意思を表明

 2010年が終わって、僕が球団に訴えたのは「とにかく補強してください」ということだった。1年間戦ってみて、まずは戦力の充実がないと何も始まらないことが痛いほど身に沁みた。

 2010年オフ、横浜(現・DeNA)の内川(聖一)がFA権を行使することを発表した。僕は球団に彼の獲得に動くよう訴えた。ご存知のように、それまでカープはFA宣言した選手を獲りにいくことは一度もなかった。マネーゲームに参加することを拒否し、FAといえば流出するばかりという状況だった。

 しかし僕はそれではいけないと思っていた。言うまでもなく内川は優れた選手である。そんな選手に対して結果がどうなるかは別として、まず獲得する意思を表明することは大事なことではないか。ファンのためにも「カープはFA選手でも獲りにいくぞ。本気で優勝を目指しているぞ」とアピールすることは必要なのではないか―そんなふうにお願いしたのだ。

 もしかしたら僕が言い出さなければ、内川との交渉の席に着くことはなかったかもしれない。最終的に彼はソフトバンクを選んだが、この一件でカープというチームが変わりつつある事実だけは伝わったのではないかと思っている。

 選手補強という意味では、外国人選手の補強も大きなウエートを占めている。この年獲得したのは(ブライアン)バリントンと(デニス)サファテという2人のピッチャーと内野手の(チャド)トレーシー。特に先に挙げた2人はそれぞれ先発、抑えとして2010年に崩壊した投手陣を見事によみがえらせてくれた。