増加の一途を辿る子ども食堂

「子ども食堂」とは、子どもが1人でも行ける無料もしくは低額で食事ができる食堂のことをいいます。場所によっては「地域食堂」や「みんな食堂」と呼ばれているところもあるそうです。  

 現在、子ども食堂の数は増加の一途を辿っており、その数は全国で7331箇所にものぼっています(2022年12月発表のむすびえ・地域ネットワーク団体による調査より)。つまり、このような支援を必要としている子どもが全国でそれだけ増えているということです。

 子ども食堂が提供しているのは、単に食事だけではありません。子どもにとって大切な「居場所」や「経験」、たとえば働く大人と出会うことや、話を聞いてくれる人と時間をともにすること、昔遊びや読み聞かせ、食育、防災などのプログラムで文化的な経験をすること。それらを通じて、全ての子どもに「人としての豊かさ」を提供しているのです。

 また子ども食堂は子ども側にとってメリットがあるだけでなく、大人にも「子育てのしやすい社会」という大きな価値をもたらします。その名称だけだと単に食事を提供する場所だと捉えられがちですが、困ったときに助け合える社会を包括的に実現する「地域づくりの取り組み」といっていいでしょう。

 このように社会的意義の大きい子ども食堂ですが、むすびえが実施したアンケート調査によると、昨今の物価上昇によって8割以上の子ども食堂が運営に影響を感じているそうです。費用の負担が増えたという回答も79%に達しているといいます。一方で、この不安定な経済状況の中、そのニーズはどんどん増えています。食堂側もコスト削減などの努力を重ねているといいますが、やはり子どもの栄養や心の充実などを考えると、その質を下げることは極力避けるべきだと考えられます。 そんな中で今永投手のような著名なアスリートから寄付が届いたことは、この局面を乗り越えなければならない子ども食堂にとって大変うれしい報せとなったはずです。

 今永投手が支援をすることで、今までなんとなくニュースで耳にしていただけの子ども食堂のことを、野球ファンの方にも身近に感じていただけるのではないかと思います。子ども食堂はみなさんのお住まいの地域にもあるはずですので、ぜひこれを機に関心を深めていただければ幸いです。

岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施している。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。

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