クリアできた2つのミッション

 2020年、コロナ禍に入って初めての緊急事態宣言中、プロ野球界は試合も練習もできない、ファンとふれ合うこともできない状況に陥りました。そんな時、プロ野球選手会が「新型コロナウイルス感染症・拡大防止活動基金」(通称コロナ基金)への協力を表明し、選手たちが自ら寄付するとともに、全国のファンにSNSで支援を呼びかけました。各球団の選手会長たちはもちろん、糸井嘉男選手(当時)や柳田悠岐選手などの主力選手たちも次々と投稿し、その様子はスポーツ紙の一面を飾りました。ファンの支援はどんどん増えていき、最終的には8億円を超える寄付が集まりました。これは今でも日本のクラウドファンディング史上最高金額です。選手たち自身も非常に驚いていましたが、これこそがプロ野球の力なのだなと実感しました。

 もう一つ達成できてうれしかったのが、「日本プロ野球選手会災害支援基金(通称・選手会ファンド)」の設立です。こちらはカープの會澤翼選手会長が旗振り役となってくれました。災害があった際、プロ野球の力でいち早く支援できるよう「緊急対応」「復旧・復興」「防災」のために備える基金です。2021年の設立時から選手会主導で毎年チャリティーオークションやクラウドファンディングを行い、その収益を選手会ファンドで積み立て、災害時の緊急支援金として活用したり、野球振興イベントの際に防災コーナーを設けて防災について啓発したりと、踏み込んだ活動を行っています。

 コロナ基金の成功と選手会ファンドの設立。この2つは、私が10年前にメジャーリーグで見た社会貢献活動の風景そのものだと言えます。いずれもサポートする立場で関われたことを大変誇りに感じています。このような成功体験を活かし、今後も選手一人ひとりの思いに寄り添いながら、日本プロ野球の発展をグラウンドの外でサポートしていきたいと思います。本連載は今回で最終回となりますが、ぜひ読者のみなさまとも「野球×チャリティー」の下でご縁ができたらうれしいです。

岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施している。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。

広島アスリートマガジン3月号は、WBC特集!『照準は世界一。栗林良吏、いざWBCへ!』。日本代表の一員としてWBCに出場する栗林選手インタビューをはじめ、世界の強豪国と戦ってきた石原慶幸コーチ、川﨑宗則選手のインタビューにもご注目ください!