◆プロ野球はいかに変わったか

 2013年の春にボストン・マラソンで爆弾テロ事件があってから、今年でちょうど10年になります。死傷者が300名ほどにものぼる大惨事が起きた際、地元のメジャーリーグ球団レッドソックスは、街の復興に全面協力することをいち早く表明し、オークションやグッズの売上と選手たちからの寄付で、負傷者や犠牲者の遺族のために2億円以上の支援金をわずか1カ月で集めました。レッドソックスはその年最下位と予想されていましたが、「BOSTON STRONG」というスローガンを掲げ、ポストシーズンに進出。そして、数々の接戦を制し、なんとワールドチャンピオンに輝きました。

 レッドソックスが物理的にも精神的にもボストン市民を救っている姿は、真のスーパースターそのものでした。当時アメリカで取材をしていた私は、純粋に野球ファンとして「こんなカッコいい姿を日本の子どもたちにも見せてあげれば、みんなきっと野球を好きになってくれるはずだ」と思い、帰国後にプロ野球選手の社会貢献活動を推進するNPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーション(BLF)を立ち上げました。

 BLFを立ち上げた当時、日本でプロ野球選手のグラウンドの外の活動といえば、子どもたちへの野球振興活動がメインでした。病院や福祉施設の訪問などもやっていましたが、選手主体というより球団主導で行うことが多かったように思います。しかし、あれから10年が経って、日本でもプロ野球選手が自分の意志で社会貢献に取り組むこと、それを積極的に発信することが当たり前になりました。今では災害時などの不測の事態に選手たちが立ち上がることも珍しくなくなり、クラウドファンディングやチャリティーラッフル(慈善福引)といった新しい寄付集めの方法も少しずつ定着してきました。社会でSDGsなどの概念が浸透する中で、プロ野球界にも大きな意識の変化があったように思います。

 BLFにも、児童虐待防止の啓発活動を支援している千賀滉大投手、開発途上国の子どもたちの自立を支援している吉田正尚選手をはじめ、いろんな選手から社会貢献活動の相談がありました。選手会のアンケートでは80%以上の現役選手が「社会貢献を行いたい・興味がある」と回答しており、今後さらに多くの選手がアクションを起こしてくれるだろうと期待しています。