◆開幕投手は5年連続大瀬良大地。「私に迷いはなかった」

─チームの現状についてお話しを伺います。まず投手陣についてはどのような手応えでしょうか。

 「床田、森下という故障からの復帰組も良いパフォーマンスを見せてくれていましたし、全体的に良い競争をしてくれたという印象です。ルーキー3人もそうですね。リリーフが濃厚な長谷部(銀次)は良いものを見せてくれましたし、益田(武尚)、河野(佳)については先発、リリーフ両面での可能性があります。周りの投手に良い刺激を与えていて、新しい風を吹かせてくれたと思います」

─開幕投手は5年連続で大瀬良大地投手となりました。どのタイミングで決断されたのでしょうか。

 「オープン戦初戦の巨人戦(2月25日・沖縄セルラースタジアム那覇)で決めました。あの試合で(大瀬良)大地が先発しましたが、投げ終わって試合中に大地を呼んで『開幕を任せたぞ。頼んだ。1年間投手陣の柱として、中心として引っ張っていってくれ』と伝えました。私としては迷いはなかったです。今までは早くに開幕投手が決まっているシーズンもあったと思うのですが、キャンプ初日から開幕投手候補の投手には『競争だぞ』と伝えていました。そういう中で、大地がずっと良いものを見せてくれていたので、私もコーチ陣も満場一致で『開幕は大地に任せよう』となりました。あの調整ぶりと実戦での内容と結果を見れば、投手陣の中でもそう思っていると思います」

2023年3月上旬、広島アスリートマガジンの独占インタビューに応えた新井貴浩監督。

─機動力野球復活など話題が多かった野手陣についてはいかがでしょうか。

 「走塁に関しては盗塁の数はあまり気にしていません。昨季は1年間で26個と少なかったですが、数を意識するのではなく、何かあったら、常に次の塁を狙う意識を徹底しました。これは足が速い、遅いは関係ありません。キャンプ、対外試合を見ていても、次を狙う意識というものが選手から見えていますし、確実に意識が高まっていると実感しています。そしてチームとして最終的に数字に現れていれば良いですし、盗塁の数というものだけは見ていません。盗塁だけが機動力ではありませんからね」

─球団アドバイザーに就任した黒田博樹さんの指導が話題となりました。

「黒田さんがあそこまで精力的に動いてくださると思っていなかったので、本当に頭が下がりますし、感謝しかありません。これからもどんどん来てもらいたいですね。特に投手陣にとっては抜群の効果があったと思います」

後編につづく

◆新井貴浩(あらいたかひろ)
1977年1月30日生、広島県出身。広島工高-駒澤大-広島(1998年ドラフト6位)-阪神(2008-2014年)-広島(2015-2018年現役引退)。ドラフト6位入団ながらも強靭な肉体で猛練習を乗り越え、4年目の2002年には初の全試合出場を果たし、28本塁打を記録してレギュラー定着。2005年には初の3割、43本のアーチで本塁打王に輝く。2007年オフにFAを行使して阪神移籍し、2011年には打点王を獲得。2014年オフに阪神を自由契約になると、広島に電撃復帰を果たす。復帰2年目の2016年に通算2000安打を達成するなど打線を牽引し、25年ぶりの優勝に大きく貢献。リーグ最年長でのMVPに輝いた。2017年以降は主に代打の切り札、精神的支柱としてチームを支え、3連覇に貢献。2018年限りで現役引退。その後はプロ野球解説者として活躍。2023年から広島一軍監督に就任。

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