◆引退を発表した投手が投げる試合ではないと、私自身もわかっていた

 そして私はこの年限りで引退する決意を固め、9月15日の広島市民球場で正式に現役引退を表明した。

 地元最終戦となった9月20日の巨人戦は、私の引退試合と新聞でも報道されていた。しかし先発は近藤芳久。私は試合展開を見てワンポイントでの登板という予定で、ブルペンで待機していた。

 カープは前日までに首位巨人と2.5ゲーム差の2位につけており、敗れれば逆転優勝はほぼ絶望となる大一番でもあった。三村敏之監督など首脳陣は、「先発で打者1人だけに投げてはどうか」など登板方法をいろいろと考えてくれたが、既に引退を発表した投手が投げる試合ではない事は、私自身も十分わかっていた。

 試合はカープが序盤で5得点するも、中盤で巨人に追いつかれる大熱戦。井上祐二、望月秀通、佐藤貞治、そして佐々岡真司がブルペンからマウンドに出ていった。8回表が終わった時点で6-7と巨人が逆に1点リード。この時私の他にブルペンに残っていたのは、ストッパーの大野豊さんと秋村謙宏だけだったように思う。

 しかし8回裏に金本知憲の本塁打で、カープは同点に追いついた。9回表、さらに延長戦になると、私が登板する事になるかもしれない。私は秋村に、「もし延長戦になったら、お前が先に行けよ」と言った。しかし前田智徳が勝ち越しタイムリーを放ち、9回表は大野さんが3人で抑えて、試合は終わった。

 私は結局この試合には登板しなかったのだが、試合後のグラウンドでは引退セレモニーが催された。チーム全員から胴上げされ、最後にはグラウンドを一周して、スタンドのファンに挨拶した。

(最終回へ続く)

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