◆敢闘賞に輝くも、日本一は逃す悔しい日本シリーズに
フルカウントから運命の勝負球として達川さんが出したサインは、やはりカットボール。私は迷わず頷くと、この得意球を腕を力一杯振って投げ込んだ。
真ん中めがけて投げたはずの球は、微妙にアウトコースからストライクゾーンギリギリに入ってくる、右打者の秋山にとっては最も手を出しにくい軌道を描いた。この球を秋山は見送った。球審は一瞬ためらってから、「ストライク!」とコールした。見逃し三振で三者残塁、大ピンチを脱出したのである。
達川さんは体全体を使って「よっしゃあーっ!」とガッツポーズをしてくれた。ダッグアウトへ戻る際にスタンドを見上げると、超満員のお客さんのほぼ全員が立ち上がって達川さんと同じぐらい大きくガッツポーズをしていた。カープはこの試合に勝って、7年ぶりの日本一へ先に王手をかけたのである。
先発で2勝を挙げた私は、西武球場での第6戦以降にリリーフで登板した。
第6戦は1ー1で迎えた6回裏2アウト満塁で西武の代打・安部理に対するワンポイントとして登板したが、代打の代打で起用された右打者の鈴木康友にレフト前に勝ち越しの2点タイムリーヒットを打たれた。カープは第6戦を落とし、決着は最終戦にもつれ込んだ。
雨で一日順延された最終戦、カープの先発は予定通り佐々岡真司。私は同点の5回裏から登板したが、西武打線の勢いを止められず逆転を許し、終わって見れば1ー7の完敗で5年ぶりの雪辱は成らなかった。
敗れたカープからは私が敢闘賞に選ばれたが「俺一人で敢闘賞なんて要らないよ。MVPならもらうけど(笑)」という気持ちだった。
本当に欲しかったのは、もちろん日本一。
私個人というよりも、王者・西武をここまで苦しめたカープ全員が敢闘賞と呼べるのではないかと、今でも思っている。
(第7回へ続く)
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