昨季、高卒2年目ながら存在感を示した奥川恭伸、佐々木朗希、宮城大弥ら「2001年世代」。カープにもまた、今季の大ブレイクが期待される2001年生まれの若き左腕がいる。ドラフト6位入団ながら前田健太以来の快挙を達成した玉村昇悟が、チームの「世代交代」を活性化させつつある。

今季、先発ローテ定着が期待される玉村昇悟。

◆「世代の顔」に躍り出てもおかしくない「越前のドクターK」

 盛者必衰のプロ野球という世界において、「世代交代」は必ずやってくる。

 今季のカープも、例外ではない。

 鈴木誠也という絶対的4番が抜け、投手、野手ともに「若い力」が続々と次世代の主力に名乗りを挙げている。

 そんな中、投手陣でキラリと光るモノを見せているのが、高卒3年目を迎える玉村昇悟だ。

 ドラフト順位は6位。福井県立丹生高校では甲子園出場経験はなく、全国的には無名の存在だった。

 それでも3年夏の福井大会で5試合52奪三振という大会新記録を樹立。「越前のドクターK」として話題を集め、プロ入りを果たした左腕だ。

 ドラフト同期には佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)、宮城大弥、紅林弘太郎(ともにオリックス)、森敬斗(DeNA)、及川雅貴(阪神)といった輝かしいメンツが並ぶ。彼らは皆、昨季高卒2年目ながら一軍で出場機会を掴みとった「ゴールデンエイジ」だ。

 佐々木や奥川、宮城といった面々はみなドラフト1位で入団し、順調に成長曲線を描いて一軍の戦力にまで成長している。高校時代から大きな注目を集めた彼らを「野球エリート」とするならば、玉村は少し違う。

 下位指名から三軍、二軍で結果を残し、「自力」で一軍登板を掴み取った。昨季は勝ち星こそ4にとどまったが、17試合に先発、101回を投げて防御率3.83。投球回数でいえば奥川の105回と遜色ない数字だ。

 打線とのかみ合わせが悪く負け数が先行したとはいえ、ドラ6投手が高卒2年目にして一軍で100イニング以上投げること自体、快挙と言える。

 ちなみに、カープの高卒2年目投手で100イニング以上を投げたのは2008年の前田健太以来、13年ぶり。前田はその翌年、29試合に先発して193イニングを投げ、さらに翌年、高卒4年目で15勝、防御率2.21で沢村賞を獲得している。

 前田健太とは投手としてのタイプが異なるため、一概に比較はできないが、「高卒2年目での100イニング達成」はそれほどのインパクトだとも言い換えられる。

 当然ながら、首脳陣の期待値も高い。

 2月16日、チームとしては初の対外試合となったDeNA戦では「開幕投手」に指名された。結果は3回を投げて4安打2失点とピリッとしなかったものの、本人も登板後に反省の弁を口にするなど、すでに一軍投手としての自覚と責任感を持ってキャンプに臨んでいる。

 直球の最速は147キロとまだ伸びしろを残すが、今季は新球・カットボールも習得してさらなるレベルアップを図っている。

 プロ野球界に一大ムーブメントを起こしつつある佐々木、奥川、宮城ら「2001年世代」の中から、今季は「玉村昇悟」がブレイクを果たし、「世代の顔」に躍り出してもおかしくない。

 まずはオープン戦で結果を残して首脳陣の信頼を掴み、開幕ローテ、その先の2ケタ勝利へ――。

 チームの「世代交代」の旗手となるべく、20歳の若き左腕が新シーズンのスタートを切る。