2025年シーズンを象徴する選手のひとり、中村奨成。入団以来、大きな期待をかけられながらももがく日々が続いていた中村奨は、昨季、キャリアハイの数字を残す活躍を見せた。
その裏側にあったのが、二軍打撃兼走塁コーチ(当時)・福地寿樹コーチの存在だ。今季から一軍打撃チーフコーチを務める福地コーチが、中村奨飛躍の舞台裏を明かした。(『広島アスリートマガジン2026年1月号』掲載記事を再編集)
◆素質は素晴らしい。けれど、どこか中途半端に見えていた
(中村)奨成が入団した当時、私はヤクルトでコーチをしていました。対戦相手として見ていた奨成は『足が速く打撃も良い非常にポテンシャルの高い捕手』という印象でした。
2023年にカープの二軍打撃兼走塁コーチに就任して同じチームとなりましたが、彼が捕手から外野手へ登録変更されたのもその年です。正直なところ、素質としては素晴らしいものを持っているのに、話をすると全てが中途半端な選手なのだという印象は拭えませんでした。中途半端というか、『自分で納得してしまう』部分があるように感じました。二軍では結果が出るので、『これでいける』という感覚があったのでしょう。でも、一軍に呼んでもらうと結果が出ない。当時の奨成は、その繰り返しでした。
年々、彼は厳しい立場に追い込まれていきました。少なくとも、周りで見ている私にはそう感じられました。そうした状況を周りが気づかせようとしましたが、奨成はわかっているようでありながら、核心の部分ではまだ納得し切れていないように見えたのです。背番号を重くする、ドラ1だと言われるけれど、そんな扱いはしない……と何度も伝え、こちらとしても、甘やかさない、けれどチャンスは与えるというスタンスで接することにしました。
そのうちに、本人がインタビューなどで「今年が最後。後がないと思っている」という言葉を口にするようになりました。私は『彼が自らその言葉を発するようになった、その時こそがチャンス』だと思っていました。自分から発信することで、本当に自分自身を窮地に追い込むことになると思っていたからです。そして私は、彼は『追い込まれたほうが力を発揮するタイプ』だと捉えていました。逆境を跳ね返す反骨心をもともと持っている選手ですから、それが良い方向に影響したのだと思います。

