◆個々の選手の高いスキルが、チームワークとして成熟していった

 同じく、京都戦、名古屋戦で2戦連続ゴールを決めた鈴木章斗も、終盤にかけてより一層自分の武器に磨きをかけた選手の一人です。やはりストライカーには、エゴイストであって欲しいと思っています。もちろん、まず優先すべきはチームの勝利ですが、やはりゴール前でボールを持ち、前を向いたら、まずは自分がシュートを放つ。多少強引であっても点を取りにいく。ストライカーにはその姿勢が必要です。

 そういう意味では名古屋戦の4点目は、象徴的なゴールだったと思います。相手DFに囲まれながら、右足でのトラップから反転しながらシュートを放ちました。このシーン、もちろん自分で打つ以外にも周りの選手にパスを出すなど選択肢はいろいろあったはずです。むしろ、鈴木自身がシュートを打つのは、難しいシーンだったはずです。それでも、「俺が行く」と決めて実際にゴールを決める。まさにストライカーならではの、良い意味での強引さを見せてくれました。

 中盤では、ボランチとしてチームの舵取りを担った川辺駿の存在も大きかったですね。しっかり自分の役割を全うして、ゲームをコントロールする。そのなかで、必要であれば攻撃参加もするし、逆に相手の攻撃の芽を摘む役割も果たしていました。

 最終ラインの3バックも、対峙する相手に1対1では絶対に負けないという自分たちの強みを存分に活かしたプレーを見せてくれていました。

 もちろん、シーズンを通して全ての選手がベストコンディションであり続けるのは、簡単なことではありません。誰かがコンディション不良になった、故障してしまった。そうなった時でも、他の選手が新たな才能を発揮してカバーする。それができるのはサンフレッチェの強さであり、特別大会の期間でさらに磨かれたチームとしての武器でもあると感じます。

 それぞれの選手が自分の持ち味を活かし、プラス、『チームのために何ができるのか』を考え続けた結果ではないでしょうか。個々の選手の高いスキルが、チームワークとして成熟していった半年間だったと思います。

(後編へ続く)

【吉田安孝(よしだ・やすたか)】
1966年11月22日生、広島県出身
現役時代はサンフレッチェ広島のDFとしてプレー。引退後は、サッカーコメンテーターとして多方面で活躍中。