現在、中澤教授らの研究室では、外から神経の働きを変化させる「神経活動変調法(ニューロモジュレーション)」といった最新技術を用い、脳活動そのものへ直接アプローチするイップス解消法の研究を進めている。

 同研究室の桶川氏らの研究では、運動の計画や出力の調整に関与する「補足運動野」と呼ばれる脳の領域を磁気で刺激する実験を実施。その結果、投球におけるボールの到達位置のばらつきが有意に小さくなる(=コントロールが安定する)という実証データが得られた。これは、ニューロモジュレーションがイップスの解消や改善に留まらず、アスリートの純粋な「パフォーマンス向上」に対しても極めて有効であるという期待が持てるものと言える。

 また、山﨑氏は、これまでの研究で、イップスを発症する選手は、運動に関連する特定の神経経路の興奮性が以上に高まっており、過活動状態にあることが明らかにした。

 そこで、ニューロモジュレーションを用いて、脳の過活動を抑制する刺激をおこなったところ、投球動作がスムーズになり、ボールの到達位置についてもばらつきが小さくなる結果が得られた。そして、地面にボールを叩きつけるような暴投や、投球動作が途中で固まる症状も消失した。

 このように、脳の過活動を外部から抑制することで、イップスの症状を改善する可能性が示唆され、これまで有効な解決策が無かったイップスについて、明確な改善方法が見えてくる、画期的な成果だ。