◆「小道具の常連」となっているあの選手

 こうした小道具の方向性を見てみよう。まずは契約更改交渉の多くが12月に行われることから、クリスマス関連の小道具が多い。

 たとえば2016年、最多勝のタイトルを獲得した野村祐輔の会見では、勝利数と同じ16個のクリスマスブーツとボールが綺麗に並べられていた。

 これがもう一段階上がると「選手本人にサンタクロースやトナカイ、ツリーなどの扮装をさせる」となる。歴史を遡れば、決まってクリスマスに契約更改交渉を行い、サンタの格好をしていた松井秀喜(元巨人)が有名だが、現在でも多くの球団で扮装選手の姿を見ることができる。

 カープにおいて現在、サンタの役割を果たしているのは中﨑翔太である。

 守護神として34セーブを挙げた2016年、クリスマスにはまだ早い12月9日に契約更改を終えた中﨑は、サンタの格好に「日本一」と書かれた白い袋を背負って登場した。

 また翌17年、1億円の大台に到達した際の会見には、やはりサンタの格好に「壱億円」と書かれた巨大な大入袋を持って微笑む中﨑の姿があった。

 これは恐らく「中﨑のヒゲがサンタクロースを彷彿とさせるから」というのが主な理由だろうと思われる。

 先ほど、小道具を持たされる選手の特徴について書いた。ここ数年のカープにおいて、いわば「小道具の常連」となっているのが鈴木誠也・大瀬良大地の両選手である。

 こと大瀬良に関しては、ルーキーの時から毎年のように何かを持って会見に臨んでいる。

 新人王を獲得した2014年には「祝おめでとう!」と書かれたくす玉付きのカピバラのぬいぐるみ、15年には「黒田現役続行」を報じるスポーツ新聞で包まれたクリスマスプレゼント、2018年にはセ・リーグ各球団の頭文字「B・G・T・D・S」を切り裂く剣、2019年は「令和元年・今年の漢字」というフリップに直筆で「和」と書かれたものと、「来季は『一体感』でリーグ優勝奪回!!そして日本一!!」という吹き出しとを両手に……といった具合である。それはやはり、期待の高さの現れなのかも知れない。

 こうした小道具の使用については賛否両論あるだろう。

 しかし確実に言えるのは「年俸がダウンした場合の会見には小道具は使われない」ということだ。

 つまり会見で小道具がたくさん見られるというのは、それだけ活躍して年俸がアップした選手が多いということの証でもあるのだ。今年末の契約更改で、より多くの工夫を凝らした小道具を見られることを今から期待したいと思う。

契約更改では毎年、さまざまな小道具が用意される。

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。