V奪回を目指すカープに加わった多種多彩な7選手。入寮日の翌日から始まった新人合同自主トレで、新たな野球人生をスタートさせた。この企画では、ドラフト指名後に行った独占インタビューをもとに、チームに新風を吹き込む新入団選手の決意を紹介していく。今回は、可能性を感じさせてくれる素材型投手、ドラフト5位・行木俊投手の意気込みをお届けする。

ドラフト5位でカープに入団した徳島インディゴソックス・行木俊斗投手。短期間で球速アップを遂げた150kmを超える力強いストレートが持ち味だ。

◆大きな成長曲線を描けるか。無限の可能性に期待!

 “シンデレラストーリー”という表現がしっくりくるかもしれない。独立リーグ出身の投手・行木俊。リーグ1年目の昨年は、怪我の影響から登板はなく、デビューは今年に入ってから。そしてわずか10試合の登板でスカウトの心を射止めた。

「調査書は届いていましたが、指名はないだろうと思っていたので、びっくりしたというのが正直なところです。おそらく監督もチームメイトも同じ気持ちだったのではないでしょうか。ただ、個人的には、例え育成選手であってもプロに行きたいという思いがあったので、うれしさも大きかったです。カープは地元に愛されている球団。赤いユニフォームはまだ身につけたことがないのでワクワクしています」

 じつは、投手として歩んできた歴史はまだ浅い。本格的に投手を始めたのは高校3年から。そんな行木の投手人生に影響を与えた人物がいる。WBCで胴上げ投手にもなった大塚晶文(元近鉄など)だ。

「大塚さんが高校(横芝敬愛高)の先輩で、僕が高校3年のときに、練習を教えに来てくださったことがありました。そこで、体やグローブの使い方など、投球フォームについてアドバイスをいただき、それは今でも参考にさせてもらっています。大塚さんは目標にしている投手の1人です」

 独立リーグ初登板となった昨年6月の試合で投げたボールの球速は130km台。力不足を認め、コロナ禍で試合ができない期間を利用し、フィジカルトレーニングと食トレに励んだ。

「投球フォームを動画で撮影し、気になる部分はすぐに修正するなど、出来ることをどんどん試しました。どれが正解だったのかは分かりませんが、試行錯誤しながらも色んなものを積み重ねたことで、シーズン後半には球速が150km近くまで出るようになりました。6月の時点ではこんなに成長できるとは思っていなかったので、自分でも驚いています」

 短期間で劇的な成長を見せた右腕だけにプロ入り後の伸び代にも期待がかかる。「まだまだ実績のない選手。伸び代の部分でとっていただいた面もあると思うので、色々な選手から話を聞き、たくさんのことを吸収していきたいと思っています。まずは怪我をせず、1年を過ごすこと。そのためにしっかりと体をつくってきました」。

 独立リーグでの1年目、怪我で離脱している間も寄り添い続けてくれた徳島インディゴソックスのチームメイトやスタッフに、良いニュースを届けることができるよう、持ち味である強気に攻めるピッチングで、新人合同自主トレから全力でアピールしていく。

「徳島に来て、高校の頃と比べて体もかなり大きくなりましたし、投手としてのレベルも上がりました。また1年目は、怪我のため、選手をサポートする側に回っていたことも今となっては貴重な経験です。昨年は、支えてくれた裏方さんのためにもしっかり投げようとマウンドに上がっていました。そういう気持ちの在り方も含めて、人としても野球人としても成長できた、徳島での2年間だったと思います」

 独立リーグを経験し、選手としても、1人の人間としても成長を遂げた行木。大きな可能性を感じさせる素材型投手だけに、人生で初となる赤いユニフォームを身に纏い、どんな成長曲線を描いてくれるか、期待がふくらむ。

◆行木俊(なみき しゅん)
2001年1月8日生
19歳/右投右打
184cm・76kg
横芝敬愛高ー四国IL徳島