現在のカープを支える主力選手のルーキー時代を振り返っていく本企画。今回は、球団史上8人目となる新人王を獲得した野村祐輔をピックアップ。

 即戦力候補としての期待を背負ってスタートしたプロ1年目の2012年、右腕はその重圧とどう向き合ってきたのか、過去の独占インタビューをもとに振り返る。

高校時代から広島と“縁のある”野村祐輔投手。即戦力右腕としての期待に応え、球団史上8人目となる新人王を獲得した。

◆1年目の僕に背負うものは何もありません

 開幕前から大きな期待をかけられていた黄金ルーキー・野村祐輔。明治大からドラフト1位で入団した右腕は、開幕ローテに抜擢されると、シーズン序盤から結果を残し、即戦力右腕に恥じない活躍をみせていた。

「自分にできることはできていると思いますが、成績はあまり気にしていません。まずはプロのシーズンを1年間経験することが大事だと思うので、1年目は成績の目標は立てていません」

 制球力を武器に安定感のあるピッチングを続け、開幕から11試合連続でクオリティースタートを記録。前半戦で7勝を挙げる活躍をみせると、新人ながらオールスターゲームにも出場した。広陵高、明治大と野球選手としてのキャリアを重ね、大舞台での試合を経験するうちに培われていった卓越した投球術は、プロの世界でも確かな輝きを放った。

「野球を始めてからずっと抑えているわけではなく、何度も打たれてきていますから(苦笑)。『打たれない』というよりも、いかに『打たれる確率を下げる』が大事。先発を任せられている以上は自分の仕事をしないといけないし、勝負している以上は勝たなければいけません」

 初めて臨むプロ野球ペナントレース。長いシーズン、ベストコンディションで臨める試合ばかりではない。先発マウンドを任されるなかで、好不調の波を減らし、状態が悪くても結果を残すことを野村は意識していた。

「シーズンに入ってベストコンディションで臨んだ試合はほとんどありません。万全の状態で登板できるというのは本当に限られた期間しかないと思います。どんな投手もいつも元気なわけではないですし、絶対に疲労はあるもの。みんながその中で結果を残しているのだと思います」

 ドラ1右腕の重圧に負けることなく、新人投手としての自分自身を冷静に分析し、結果を残し続けていた。

「僕はまだ1年目なので背負うものは何もありません。エースのマエケン(前田健太)さんをはじめ、長年プロ野球で活躍されている先輩方は、プレッシャーもすごいと思いますが、僕はまだ数ヶ月ですからプロのことを語るレベルではありません。まずは1年間通してやって、こういうのがプロなんだと感じたい。経験と成長というものをしていきながら、プロの世界を分かっていきたいですね」

 ルーキーイヤー、野村はシーズン最後まで先発ローテを守りぬき、9勝を挙げ、防御率1.98を記録。圧巻の成績で、球団史上8人目となる新人王を獲得した。その根底には、アマチュア時代から追い求めた、結果へのこだわりが息づいていた。