どんな選手も最初は“ルーキー”だった。現在のカープを支える主力選手のルーキー時代を振り返る本企画で今回取り上げるのは、守備固めや代走の切り札として活躍する、ユーティリティープレーヤー・上本崇司。プロ入りして間もなく行った取材での話をもとに、上本の野球への真摯な思いを改めて振り返っていく。

守備固めや代走の切り札として活躍するユーティリティープレーヤー・上本崇司選手。プロ1年目から一軍で30試合に出場し経験を積んだ。

◆「0」は木村拓也さんが付けていた番号ですし、むちゃくちゃうれしかったです

 広島県福山市出身。広陵高から明治大に進学し、2013年シーズン、ドラフト3位で地元のカープに入団した上本崇司。名門校の野球部で、レギュラーとして活躍した経験を経て、プロ野球の世界に入った。

「プロの練習はずっと楽しみにしていました。実際にキャンプを経験して『レベルの高いところで練習できている』という実感があって楽しく過ごせましたね。やはり多くのお客さんの中でプレーするのはアドレナリンが出ます」

 高校は甲子園に何度も出場経験のある名門・広陵高。兄である上本博紀(元阪神)がプレーし、すでにカープに入団していた野村祐輔、中田廉らとはチームメートとして、野球漬けの日々を送った。

「(高校進学は)兄の影響はありますね。それと、中井哲之監督の下で野球がやりたいと思ったことも大きな理由です。希望通りに進学できたのは幸せなことですね」

 高校1年の秋からショートのレギュラーとして活躍。2年夏には甲子園準優勝、3年夏には甲子園で先頭打者ホームランを放つなど、輝かしい成績とともに、明治大に進学した。

「高校卒業後は、大学に進学することしか考えていませんでした。先輩の野村(祐輔)さんがいることもあって、明治大に進学したいと思っていました」。

 大学時代の上本は、高校と同じように1年の頃から試合に出場。守備と走塁を高く評価されレギュラーとして活躍し、日本一も経験した。

「“自分が一番だ”という意識でやっていました。プロに入ればまだまだですけど……(苦笑)。高校時代は中井監督、大学時代は善波(達也)監督と、とても良い指導者に巡り会えて充実していたと思います。お二人とも、僕にとっては神様のような存在です」

 豊富な経験、野球センス溢れる華麗な守備と走塁を武器に活躍を続ける上本を、カープのスカウトは見逃していなかった。上本本人は、下位指名でもプロへという気持ちで臨んだドラフトだったが、カープが3位指名。

「驚きで頭が真っ白になりました。カープは好きな球団だったので、素直にうれしかったですね」。

 任された背番号は、内外野どこでも守れるユーティリティープレーヤーとして活躍した故・木村拓也(元カープなど)が背負っていた「0」番。その番号は、今もなお、上本の背中で輝き続けている。

「木村さんが付けていた『0』に決まったときは、むちゃくちゃうれしかったですね。走攻守三拍子揃った選手になりたいです。具体的に言うと、昔から目標にしていて、チームの先輩でもある梵(英心・現オリックス一軍打撃コーチ)さんを目指していきたいですね」

 上本はプロ1年目から一軍で30試合に出場。その後はチームを盛り上げるムードメーカーとして存在感を発揮しつつ、2020年には劇的サヨナラ安打を放つなど、着実に一軍に自らの居場所を作り上げた。かつて木村拓也が築いたカープのユーティリティープレーヤーの伝統は、いまもなお上本が守り続けている。