現在のカープを支える主力選手のルーキー時代を振り返る本企画。今回は、カープのエースへと成長を遂げた大瀬良大地の意気込みを取り上げる。

 3球団競合の末、カープが大瀬良大地との交渉権を獲得した2013年のドラフト会議から6カ月。開幕から先発ローテの一角として活躍を続けていた右腕が当時語っていた言葉をもとに、背番号14が放つ魅力に迫る。

ドラフト1位の期待を背負い、カープに入団した大瀬良大地投手。プロ1年目から2桁勝利を挙げる活躍で、球団史上9人目の新人王に輝いた。

◆プロ初登板はとにかく投げていて楽しかった

 九州共立大時代の大瀬良を追い続けた田村スカウトが見事にクジを引き当て、ドラフト1位でカープ入団が決まった大瀬良大地。当時の野村監督からの期待も大きく、開幕ローテーションに抜擢された。

「開幕ローテに入っていないと、そこから先の1勝、10勝、新人王という話にもならないので、まずは開幕一軍でローテに入ってというところが第一段階の目標だったのでホッとしましたね」

 大瀬良のプロデビューは4月2日のヤクルト戦(マツダスタジアム)。振り返ると、最終調整登板となった二軍の試合では、5回5失点と不安を残す結果でペナントレース開幕を迎えていた。

「心配されるだろうな~って思いました(苦笑)。ただ真っすぐとかは良かったし、カーブとチェンジアップの精度を試合中に修正できました。課題にして取り組んできたことができたので、なんとか大丈夫だろうという気持ちではいました。実は、由宇球場で投げるのは初めてだったんです。もっと寒いのかなと思ったら、結構暖かくて投げやすかったですね」

 普段は柔和な表情の持ち主ながら、マウンドに上がると闘争心に溢れる表情に一気に変わる背番号14。その心の切り替えもルーキー右腕は強く意識し、戦いのマウンドに臨んでいた。

「ラインを跨いだくらいでスイッチが入りますね。マウンドでやんわりした顔で投げても頼りないと思うので。とにかく打たれたくないし、負けたくないんです。だから勝手に顔がそうなっているんだと思います。でも本当によく言われるんですよね。顔が全然違うなと。無意識なんですけど、そのときの気持ちが顔に出るんだと思います」

 強い気持ちで上がったプロ初登板のマウンドでは7回2失点の好投。開幕前の不安を払拭する結果を残し、幸先の良いプロのスタートを切った。

「投げていて楽しかったですね。1個アウトを取るのも『おっし』、『よし1アウトだ』みたいな。普段みんなは思わないだろうと思うんですけど、初登板だったっていうのもあったし、アウト1個取るのも難しいなと思いながら投げていたこともあって、楽しかったですね」

 その後、大瀬良は、4月16日の阪神戦(マツダスタジアム)でプロ初勝利を記録。以降もマウンドに立ち続け、シーズンが終わってみれば10勝を挙げる活躍で、球団史上9人目となる新人王を獲得した。その後紆余曲折を経て、今やカープのエースとして投手陣を牽引する存在となった背番号14。ルーキー時代から一皮向けた魅力を身につけた右腕は、今もなおカープファンを魅了し続けている。