現役カープ選手のルーキー時代を振り返る本企画。今回は、2020年に933日ぶりの先発勝利を挙げた薮田和樹をピックアップ。大学時代は無名ながら、カープがドラフト2位という上位での指名を行ったことが話題を呼んだ“隠し球”投手は、どのような思いでルーキーイヤーを過ごしていたのだろうか。

2014年ドラフト2位でカープに指名された薮田和樹投手。

 輝かしい実績とは無縁の状態で2014年ドラフト2位でカープに指名された薮田和樹。有原航平(早稲大大)、安樂智大(済美高)などの目玉投手に注目が集まっていた同年ドラフトにおいて、ドラフト2位という高い順位で指名された薮田の存在は一際目立っていた。

 貴重な亜細亜大時代の登板を、カープのスカウトが見たことによってその潜在能力を高く評価されたが、もともとは大学に進学する予定ではなかったと当時は語っていた。

「高校で野球を辞めて働こうと思っていました。プロ野球選手になるという夢は諦めていましたね。ですが縁あって大学進学が決まった際には昔から祖父から言われ続けてきた『やるからには一番上を目指せ』という言葉もあり、プロ亜野球選手になるという思いが再燃しました」

 祖父からの言葉を胸に秘め、大学野球の名門・亜細亜大学で再びプロ野球選手という夢を追いかけ始めた薮田。大学時代は思うような結果を残せなかったものの、見事夢を叶えることに成功した。

「実績がない自分を評価していただいたことについては本当に感謝しかありません。地元に帰るきっかけにもなりましたし、カープは野球を始めた頃からの憧れでもあったので、本当にありがたいと思っています。球団にも、家族にも、これまで関わってくださった指導者の方々にも、全ての人に自分のプレーで恩返しするつもりで頑張っていきたいです」

 中学時代は広島安芸リトルシニアに在籍していた薮田にとって、地元球団であるカープは憧れの存在。事実少年時代の憧れはかつてカープで4番を務めていた金本知憲氏。「カープの4番を打たれていたこともあり、『この人』」 

 「誰もがうなるような、凄まじい球を全力で投げ込み打者を抑えていきたいです」

 その後2017年には、シーズン途中に先発へと転向し15勝3敗という数字を残し、セ・リーグ勝率第1位に輝いた薮田和樹。ここ数年は周囲の期待に応えられていないが、昨季久々の先発勝利を挙げただけに、2021年こそ再び力強い投球をマウンドで見せてくれるはずだ。