お笑い芸人として活躍中のザ・ギース尾関高文氏の本連載。これまでカープに在籍した歴代外国人選手を、時には厳しく、時には優しく、時にはユーモアを交えながら、尾関氏ならではの視点で紹介していきます。今回は、2012年に長距離砲として期待されて来日し、3打席連続アーチを放つなど活躍。ファンの声に全力で応えるなど、多くのカープファンから愛されたニック選手について語っていただきます。

 

◆覚醒モード突入と思いきや、まさかの……

 カープでの通算出場66試合。ホームラン10本、打率.223。この数字からは想像できないほどカープファンに愛され、そしてロマンを感じさせてくれたのがニックでした。

 クマのような大きな体に、あのザガースキーをも超える、カープ助っ人史上1番の笑顔はカープ低迷期の一筋の光でもありました。“成績はちょっとあれだったけどニックが好きだった”、というカープファンも多いのではないでしょうか。

 ニックがカープに来たのは2012年のこと。菊池涼介選手や野村祐輔投手が入団したり、福井優也投手がブラゼルと乱闘になった年でもあります。

 この年はマエケン投手(前田健太)を始め堂林翔太選手の活躍、助っ人はバリントン、ミコライオ、サファテ、エルドレッドと駒が揃い、ようやく低迷期から抜け出せそうな雰囲気が漂っていました。あとは長距離砲さえハマれば……と期待され来日したニック。

 元カージナルスということもあり、どことなく、トビー・マグワイア的な空気を纏うニックは、オープン戦からホームランを打ちスタメンへと定着します。

 そして4月6日のマエケン投手がノーヒットノーランを成し遂げた際には、レフトフェンスへの大きなあたりを見事キャッチ! 自身も日本での初ホームランを放ちます。

 そして極め付けは5月8日の阪神戦。ここでなんと3打席連続ホームラン!(2打席目はホームランをファールと誤審された直後のホームランだったので実質4打席連続ホームランなのです)

 ニック覚醒モード突入。ここからカープの躍進が始まる……! と、思ったのも束の間、6月になんとニックが左膝前十字靭帯損傷、および内側半月板損傷。そのまま手術のためにアメリカへと帰ってしまうのでした。