◆伸びるために必要なのは試行錯誤の繰り返し

 以前のコラムでも紹介しましたが、考え方の好例として、カープの高卒3年目内野手・羽月隆太郎選手のエピソードを紹介します。

 羽月選手がプロ1年目のオフ、僕が主催する自主トレに参加したときのことです。

 12月に行った自主トレでの打撃練習で、ラプソードを使って計測したところ、弱点となるコースが判明しました。しかし、翌月の自主トレに来たとき、再びラプソードで計測したところ、苦手コースを見事に克服していました。自分なりに意識して練習していたのだと思います。

(ラプソードについてはこちらから

 羽月選手は、自分にとって必要な情報にとにかく貪欲でした。自主トレでは、自分に足りないものを持っている選手に、プライドを捨て、素直にアドバイスを求めにいっていました。このラプソードのデータに関しても、羽月選手が振り込めば何とかなるという意識で練習に取り組んでいたら、もしかすると、課題克服に時間がかかっていたかもしれません。

 現状の数値を見て、今のままではよくないと思うときは具体的にアドバイスを送り、選手と一緒になって解決策を考えていくのが、トレーナーとしての僕のスタンスです。ただ、走り込みや投げ込み、素振りなど反復練習をすれば元に戻ると考えている選手は、「練習すれば大丈夫です」と答え、自分の殻に閉じこもる選手が多いように感じます。

 これまで積み重ねてきたものを変えるのは怖いでしょうし、新しいことにトライすることでさらに悪化するのではないかと考えてしまう気持ちも分かります。

 ただ、長年のトレーナー経験で思うのは、何も変えることができないまま、数値がどんどん落ちていくパターンの選手も多いので、“変える勇気”を持つことも大事です。見直すことは決してマイナスなことではありません。そして、結果(データ)に向き合える選手は、見直す作業が非常にうまいです。この見極めの速さが、伸びるためには不可欠な要素です。

 見直す作業をする際に必要なのは記録です。例えば、身長や体重、運動記録を定期的にメモしておく。戦術を記録しておく。それを長いスパンで残しておくことをオススメします。データが多ければ多いほど、伸びているのか伸びていないのかが分かりやすいからです。

 試合で結果を残せないとき、練習が足りないなどのメンタルの理由に逃げがちですが、何がよくなかったのかを考えることができる能力を築いていってほしいですし、その意識が定着し、見直す習慣をできるようになれば、結果が出ないことも大事な情報として捉えることができるようになるはずです。

 反復練習を繰り返してもうまくいかないと悩んでいる選手は、失敗が悪いのではなく、うまくいかないことも大事な結果だと考え方を変えて、色々なアプローチを心がけてほしいと思っています。

 そういった選手をサポートするためにも、科学的視点を取り入れたトレーニングを実践したり、SNSやYouTubeなどで情報発信を続けています。
 鍛錬の冬、この時期のトレーニングの成果が、春、そして夏へとつながっていくのは間違いないため、成長につながる有意義な時間を過ごしていってほしいですね。

 僕が考えた野球トレーニングに関しては、Mac's Trainer Room野球トレーニング専門チャンネルで公開しています。ご覧いただき、まだトライしたことがないトレーニングがあれば、一度試してみてください。選手のみなさんの課題解決のきっかけになれば幸いです。

 また、今月から、音声SNSアプリ「Clubhouse」で、野球トレーニングや疲労回復に役立つサウナに関する情報を定期的に発信しております。Clubhouseを使われていたら、こちらもチェックしてみてください。

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高島誠(たかしま・まこと)
広島県東広島市の西条町にある、野球専門のトレーニングジム「Mac's Trainer Room」の代表。オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナー経験があり、現在も数多くのプロ野球選手とトレーナー契約を結んでいる。趣味はパルクールとサウナで、サウナ・スパプロフェッショナルの資格も持つ。野球トレーニングのオンラインサロンの運営、【英語】x【身体作り】x【野球】がテーマの中学硬式野球チーム「東広島ポニー」に携わるなど、様々な分野で活躍。「Mac's Trainer Room」のYouTubeチャンネルでは、野球トレーニングに関する動画を公開中。

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