伝統の『8』を引き継いだ広島ユース出身の川辺駿。今やチームの中心選手として欠かせぬ存在となった。

◆伝説の背番号を引き継いだ広島出身の川辺駿

 Jリーグの背番号は1996年までは、試合ごとに登録メンバー16人が『1』から『16』までをつけるルールだった(先発11人が『1』から『11』を、控えの5人が『12』から『16』をつける)。1997年から現在と同じく、シーズンごとに各選手が個別の背番号をつけるようになると、のちにサンフレッチェの象徴となる選手が、背番号8をつけた。

 言わずと知れたMF森﨑和幸だ。プロ2年目の2001年に8番を託されると、経験を重ねながらチームに不可欠な存在となっていく。正確な技術や優れた戦術眼などを武器に、初代8番の風間と同じボランチのほか、攻撃的MFや最終ラインでもプレーした。

 双子の弟・浩司とともに広島市で産まれ、サンフレッチェのユースで成長してプロになった。クラブのアカデミー(下部組織)で育った選手が、地元のクラブでプロとして活躍する姿は、選手の育成・強化や、地域との連携を目指すJリーグの設立趣旨に沿ったものとも言える。引退後に浩司との共著で公表したように、うつ病に苦しめられながらもサンフレッチェ一筋で活躍し、2012年から4年間で3回のJ1リーグ優勝にも貢献した。

 実に18年間、背番号8を担った森﨑和は2018年限りで現役を引退。現在はサンフレッチェのクラブ・リレーションズ・マネージャーとして活動している。翌2019年は誰も『8』をつけずに空き番号となったが、昨季、新たな選手に引き継がれた。

 後継者となったのは、MF川辺駿。広島市出身で、ジュニアユースからサンフレッチェのアカデミーで育ち、風間や森﨑和と同じくボランチを主戦場としていることからも、8番の系譜にふさわしい存在だった。プロ入り当初は出場機会をつかめなかったが、2015年から3年間、ジュビロ磐田に期限付き移籍して経験を積み、2018年の復帰後は年々存在感を増している。

 攻守のバランスを取る働きが光った森﨑和に対し、川辺は相手ゴール前まで攻め上がって得点に絡む動きが持ち味。2021年のサンフレッチェ広島イヤーブックでも、川辺は8番を引き継ぐにあたって「カズさんのようなプレーをするのではなく、自分のプレーを、これまで以上に思い切り出したいと思っていた」と振り返り、さらに「カズさんを超えて、8番は川辺の番号だと思ってもらえるように、もっとやらなければいけない」と語っている。

 25歳、選手として脂がのってくるのはこれから。次世代を担う8番が『有言実行』の活躍を見せれば、サンフレッチェはタイトル獲得に近づくはずだ。